ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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参った参った!急に吹雪くんだもんなぁ」
「参った参った、じゃないでしょ!何処行ってたのよ、自分の当番ほっぽって!大輔やヒカリちゃんも小母さんに頼まれてアンタのこと探してたんだからね!」
「あー!太一さんいたー!」
「お兄ちゃん!」
部屋の真ん中で、ミミと光子郎に構ってもらいながら暖を取っていた大輔とヒカリは、聞き慣れた声にぐるりと振り返る。
爆発した頭を見て、ぱあっと顔を輝かせると、2人一緒に太一に飛びかかった。
「ぐえっ!」
「太一さん、今まで何処にいたの?」
「お母さんが捜してたよ。ダメじゃない、当番サボっちゃ」
「う、わ、わりぃ。えーっとちょっとトイレにな……」
「誤魔化し方下手くそか」
しどろもどろになって目が水魚の如く泳ぎまくっている太一に、治が冷静に突っ込んだ。
「あーもう……」
「丈先輩?」
力ない声に反応したのは空である。黒髪で眼鏡の少年が、項垂れながらお堂に入ってきた。
大輔もヒカリも知っている、だって大輔のお姉ちゃんと同い年で、同じクラスの委員長さんだから。
「やあ、みんなも吹雪に巻き込まれたのか……」
「はい……」
「暫くやみそうにないな……しょうがない、ここでじっとしてよう」
「光子郎、携帯持っているかい?」
「持ってますけど、この吹雪だと……」
「うん、だろうね。やんだらかけられると思うから、その時はよろしく」
「分かりました」
そんな会話をした数十分の後、先程の吹雪が嘘みたいにやんだ。
ガタガタ、ってお堂の障子の音がしなくなったから、たぶんやんだんだろうって治が判断して、太一が代表して障子を開けると、太陽の光を反射して煌めいている白い絨毯が敷かれていた。
真っ先に飛び出して行く太一を追って、空もお堂の入り口に立つ。
途端に、遮るものがなくなった冷たい風が、剥き出しになっている空の顔や腕を容赦なく襲い掛かった。
次いで飛び出して行ったのは、掌ほどの大きさがあるペンダントを首からかけた男の子である。
わーい!とはしゃぎながら外に飛び出して、真っ白な絨毯の上を踏みしめる。
待ちなさい、って治が慌てて後を追って行った。
早く戻った方がいい、という丈の言葉を遮って、ミミも外に出る。
「……ダメかぁ。吹雪が止んだら電話届くと思ったのに……」
吹雪がやんだと聞いて、光子郎が真っ先に確認したのは、持ってきた携帯とパソコンの電波状況である。
1999年と言えば情報社会の先駆けのような年代である。
軍事用として開発されたパソコンが家庭用に普及され始めて、一家に1台の波が広がり始めた頃である。
子どもが持つには少しばかり高価なパソコンや携帯を、小学4年生ながらにして光子郎は既に所持していた。
パソコンのことなぞこれっぽっちも分からない大輔とヒカリ
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