ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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れどころか大輔の英語講座の生徒が少しずつ増えていって、最終的には一緒に調理をしていたそのグループの下級生が全員調理の手を止めてしまった。
こら、って上級生が慌てて注意して、我に返った下級生は慌てて調理を再開する。
最初に気づいたのは、ヒカリのお母さんだった。
子ども達主体で進めているカレー作りのアシスタントの1人であるヒカリのお母さんは、歩き回りながら子ども達の様子を伺っていたのだが、ふと辺りを見渡すと長男である太一が何処にもいないことに気づいた。
上級生達は、下級生が皮をむいた野菜を切る役目を担っている。
出来ましたーって下級生の子達が上級生の子達に持って行くのを微笑ましく思っていたのに、その上級生の1人である太一が何処にもいないのだ。
サボったことは容易に想像がついたので、お母さんは溜息を吐いてもう1度辺りを見渡す。
目に着いたのは、娘であるヒカリと1番仲良しの男の子である大輔だった。
他の下級生の子達と同じように、皮をむき終えて上級生達に渡しに行くところだった。
「ヒカリー、大輔くーん」
「なぁにー?」
「?」
「お野菜、終わったのね。それお母さんが持って行くから、ヒカリと大輔くんはちょっと頼まれてほしいことがあるんだけど、いい?」
何だろう、ってヒカリと大輔は顔を見合わせる。
お母さんはそんな2人に、困ったような笑みを浮かべて目線を合わせてしゃがんだ。
「あのね、太一がどっか行っちゃったみたいなのよ。自分のやらなきゃいけないことほっぽって。だからちょっと探してきてくれない?お母さん、まだ手が離せないから……」
「うん、いいよ」
「OK!」
ヒカリのお母さんのお願いを快く引き受けた大輔とヒカリは、行ってきまーすって言って太一を探しに行った。
今日キャンプ場に来ていたのは、子ども会の子達だけではなく、色んな団体や家族連れがキャンプ場に来ていたから、子ども達が立ち入り出来る場所は限られている。
ここからここまで子ども会の方で借りたので、これ以外の場所は行ってはいけませんよ、って最初に言われていたから、すぐに見つかると思っていた。
が、太一は何処にも見当たらない。
少なくとも、子ども達がみんなでカレーを作っているこの場に、太一はいない。
何処に行ったのか、と大輔とヒカリはどんどんどんどん人気のないところへ、子ども達がいないところへ、大人の目が届かないところへ向かって行った。
気が付くと人気の全くない、奥の方にまで来ていた。
キャンプ場の何処にも太一の姿はなかったから、もしかしたらサボっていることがバレないように人気のないところにいるのかもしれない、というのは小学2年生の2人でも簡単に想像できた結果である。
憧れの先輩は何処かな、って大輔がちょっと駆け足になる。
その
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