ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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人参の皮むきってこうでいいの?」
「ジャガイモ切りにくいよー!」
「あれ?お肉は?」
キャンプと言えばカレーである。
子ども会のプリントに書いてあった材料をそれぞれ取り出して、先生からの注意事項を体育座りで聞いていた子ども達は、早くカレーを作りたくてうずうずしていた。
キャンプという非日常の中で、子供の大好物トップ3に入るカレーを作るなんて、考えるだけでもわくわくするものだ。
いつもはお母さんのアシストと言う名の食器運びだけれど、今日はお母さんやお父さんがアシスタントで、子ども主体のカレー作りなのだ。
先生の注意事項が終わると同時に、子ども達はわっと蜘蛛の子を散らすように解散する。
野菜を切る子、お肉を切る子、お米をとぐ子、薪用の乾いた枝を拾う子、それぞれ役割を決めて準備に取り掛かり、先生や大人達はそれを傍らで見守ることに徹していた。
最初こそ子ども達は意気込んで、初めてにも等しい料理に挑んでいくが、進めていく内に少しずつ少しずつ思い描いていたものとずれ始めていく。
お母さんが家でやっている通りにやってるのに上手くいかない、と嘆いている子がいる。
玉ねぎを切っている子が目にしみるーと他の子に泣きついている。
料理に飽きた男の子達が、先生の目を盗んでサボっている。
それを見つけた女の子達が先生に言いつけに行く。
いつだって女の子は男の子よりも早熟なので、先生に言いつけたな、って仕返しにくる男子の行動なんかお見通しである。
先生ー上手く切れないのーと上手く先生を呼びだして、男子の仕返しを阻止するのである。
ぐにに、と男子は歯を食いしばるばかりである。
そう、男子と女子の対立と言うのは小学校から始まるのだ。
でも、そんなの関係ねぇと言わんばかりの二人がいる。
「人参!」
「にんじん!Carrot!」
「きゃろっと……」
大輔とヒカリだった。
大輔が転入してきてからずーっとずーっと大輔のお世話をしてきたヒカリのマイブームは、大輔が使っている英語を覚えることである。
ヒカリが手にしたものをまずヒカリが日本語で言う。
そしたら大輔がそれを復唱した後に、英語で言う。
それの繰り返しである。これが思いのほか楽しいのだ。
日本語だと思っていたものが英語だったり、日本語でも英語でも同じ言葉だったりと、面白いことがいっぱい知れるのである。
「次はー……これ!ジャガイモ!」
「じゃがいも!Potato!」
「ぽてと?英語でもぽてとって言うの?」
「そうだよ!日本語でも言うの?でもさっきじゃがいもって言ってたよね?」
「じゃがいもって言う人もいるし、ぽてとって言う人もいるよ」
「ふーん?……次!Onion!」
「おにおん?玉ねぎ!」
最早見慣れた光景だったので、子ども達は誰も何も言わない。
そ
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