ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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ある。
ぐっもーにん、ってヒカリちゃんはニコニコしながら走ってきた大輔の両手を取った。
首元に光っているのは、お兄ちゃんである太一の額にあるものとは形状が違う、ちょっと古いゴーグル。
大事なものなの、って前に遠足に出かけた時にもかけていて、何かイベンドごとがある時はいつもかけてきているのだと教えてくれた。
鈍い金色に縁取られている少し曇ったレンズは、何処か古臭さを感じるしヒカリにはちょっとごつくないだろうか、と思わなくもないがヒカリ自身が気に入っていて大切なものなら、他人が口に出すべきことではない。
大輔だって買った覚えのないホイッスルを大事にしているのだから。
太一と知り合ったのは、ヒカリを通じてである。
日本語が分からなかった大輔を連れて、お兄ちゃんがやっているサッカークラブに連れて行ってあげた。
サッカーが大好きな大輔は、目を輝かせた。
目をキラキラさせていた大輔をニコニコしながら見つめて、あれがお兄ちゃん、って1番動いている人を指した。
それが太一だ。
太一は太一で、大人しくていつもお友達の輪の中で誰かの話を聞いているのが好きな妹が、見慣れない男の子と手を繋いでサッカークラブに見学しにきていたから、ボールを蹴り損ねてしまった。
誰だそいつ、ってしどろもどろになりながら尋ねれば、妹は至極当然と言いたげに大輔くんって答えるものだから、太一は違うそうじゃないと頭を抱える羽目になる。
まあ、それも最初の内。大輔がサッカー少年と聞いて、太一はじゃあ一緒にやるかって持前の人懐こさを発揮して大輔をサッカークラブに誘ってくれた。
日本語が分からない、とヒカリを通じて知って、英語が分かる同じサッカークラブの友人に通訳を頼んだり、日本語を教えたりと、ヒカリと同じぐらい世話を焼いてくれた。
いつの間にかヒカリの隣に座って、同じように見学をしていた大輔のお姉ちゃんと4人で、オレンジ色に染まる帰り道を一緒に帰ったことは、今でも鮮明に思い出せる。
「みんな集まったかー?」
それぞれ乗るバスの前に集まって、引率の先生が点呼を取る。
3日間一緒に過ごす人達と同じバスに乗り込んで、まずはバスの中で注意事項を受けた。
走っている最中は立ち上がらない、窓から身を乗り出さない、気分が悪くなったら先生に言うこと、などなど遠足でバスに乗った時と全く同じ注意を受け、時間になったのでバスは出発した。
カラリ、と首にかけたホイッスルが音を鳴らした。
誰かに、呼ばれた気がした。
みいんみいんという蝉の喧しい鳴き声が響く。
空に浮かんでいる雲は一握りほどしかなく、夏の太陽がギラギラと容赦なく照り付けていた。
豊かな自然が溢れるキャンプ場で、子供達の笑い声がする。
「ねー、
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