ちいさなしまのおはなし
始まりの夏
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を繋いで、お兄ちゃんの後に続こうとしたヒカリだったけれど、大輔が立ち止まって空を見上げたのでつられて足を止め、天を仰ぐ。
空のカーテンの向こうに、不自然な光が見えた。
緑色で、台風のように渦巻いていた。
歩き出そうとしていた太一達の足が、再び止まる。
真夏に吹雪とオーロラという異常事態に見舞われていた子ども達は、もう何が何だか分からない。
何だ何だと狼狽えている間に、緑色の渦から幾筋もの光が伸びてきた。
隕石と呼ぶには小さく、流れ星と呼ぶには荒々しい光の筋は、真っ直ぐ子ども達の下に向かって落ちてくる。
危ない、と叫んだのは誰だったか。
どぉん!どぉんどぉん!!
小さな爆発音と衝撃、悲鳴が辺りを包んだ。
集団の前を陣取っていた太一は、後ろの方にいる大輔とヒカリの下に走って、咄嗟に抱きかかえる。
敷き詰められた雪の絨毯が白い煙のように舞い上がり、更に絨毯を突き破って地面に突き刺さり、破片が飛び散る。
子ども達は反射的に頭を抱え込んだり、腕で顔を庇って衝撃や舞う埃から身を護った。
「みんな、怪我はない!?」
雪まみれになりながらもみんなの心配をする空は流石と言うべきか。
ああ、と太一が短い返事を返す。その腕には、目を白黒させている大輔とヒカリがいた。
「2人とも大丈夫か?」
「うん、平気」
「Yes!」
元気な返事を聞いて、太一はホッと胸を撫で下ろす。
他の子ども達も、空の問いかけに返事を返した。
「何とかな……」
「はぁ、びっくりした……」
「い、一体……」
今のは、何だったのだろうか。尻餅をついた丈が、唖然と呟く。
そうだ、先程の衝撃の正体。空から落ちてきた流れ星。
頭を抱えて姿勢を低くしていた光子郎が、白い絨毯に両手をつきながら光が落ちてめり込んでいる地面を、恐る恐る覗き込む。
すぅー……
光の柱が伸びた。え、って光子郎は目を丸くする。
光の柱に押し出されるように浮かび上がってきたのは、見たことのない小さな機械だった。
薄いヴェールの光の珠に包まれながら浮かび上がってきた機械を、子ども達は咄嗟に掴む。
恐る恐る、と言った様子で、子供達は手を広げて掴んだ物を見下ろした。
薄い水色で、真ん中にはディスプレイがあり、その周りに見たことのない模様が彫られていた。
右に楕円のボタンが上下に2つ、左に丸いボタンが1つ。
「何、これ……」
「ポケベルでも、携帯でもないし……」
空が投げかけた呟きを拾ったのは、光子郎だった。
これは、一体何なのだろう。大輔は空に翳してみたり、耳元で鳴らしてみたりしたが、カチ、カチ、という音がするだけだった。
変なの、ってもう一回それを見下ろすと、機械が不思議な音を鳴らしながら、ディスプレイを緑色に発光させる。
え、え
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