はじまりのおはなし
[6/8]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
はいやってそっぽを向いた。
せっかくお姉ちゃんが誘ってくれたのに、ってお母さんは彼を叱ろうとしたけれど、姉が止める。
姉も分かっていたのだ、彼の拗ねる気持ちを。
だってお姉ちゃんとはいつでも遊べる。
お姉ちゃんは来年小学生だけど、それでもお父さんなんかよりずっと早い時間に帰宅しているから、お姉ちゃんと遊ぶ時間はいっぱいある。
でも父は雑誌のお仕事がとっても忙しくて、なかなか帰って来られない。
だから今日はその分もいっぱい遊ぼうと思っていたのに……。
彼はほっぺたを膨らませたまま、ずかずかと窓に近づく。
がら、と窓を開けたので、母は慌てて何してるのって近寄ったら。
「かみさまのばかー!あめやませろよー!」
と叫んだ。
キリスト教が信仰されているこの国で、神様の悪口を大声で言うなんてと、母は顔を真っ青にして窓をピシャリと閉めた。
何てことを、と叱りつけようとしたら。
「………あれ?」
娘の、キョトンとした声。
とたとたと近寄ってきて、窓にぴったりと張り付く。
お母さん、と少し舌足らずな声で母を呼ぶ。
「雨、止んだ」
「え?」
ほら、って娘は窓の外……正確には空を指差す。
異変に気付いた、新聞を読んでいた父も新聞を畳んで何があったと近づいてきた。
皆で窓の外を見る。地面を叩きつけていた、バケツをひっくり返したような雨は、止んでいた。
ザーザーがサーサーとなり、やがてぽたぽたとなり、空を覆っていた灰色の雲が掻き分けられていくように、左右に引いていった。
光の柱が雲の隙間から幾つも零れている。
彼がまだ寝ている時に流れていたお天気のニュースでは、今日どころか明日まで土砂降りの雨だろうって言われていたのに。
母も父も、そして姉もポカーンと空を見上げている。
彼だけが、ニコニコとした顔ではしゃいでいた。
「やったあ!はれたよ!おとーさん、あそびにいこー!」
「え、あ、うん……」
はしゃぐ息子を他所に、父親は呆けた声しか出せなかった。
そんなわけで、彼は大変に不思議な男の子だった。
度々そんなことを言ったりやったりしては、家族を怖がらせていた彼だったが、彼の家族はそれ以上に寛大で、おおらかだった。
彼が変なことを言ってもやっても、母親は最初こそ驚いたもののその内慣れてしまった。
それどころか面白がって、彼から話を引き出すのである。
今日は何があったの、どんな子と遊んだの。彼を否定せずに話を聞いてくれるから、彼は全部話すのである。
父親も、仕事柄怖い話などは聞き慣れていた。最近は息子と外に出かけるよりも、彼から話を聞く方がずっと面白いらしい。
そして、彼のお姉ちゃん。彼はお姉ちゃんが大好きだ。何かあると真っ先にお姉ちゃんに報告する。
怖い幽霊に会った時、わんわん泣
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ