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ナイン・レコード
はじまりのおはなし
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ら声が聞こえた。
彼がいるのだから、声がするのは当たり前だ。
楽しそうに笑っている声。がちゃん、がちゃん、と何か軽いものをぶつける音がする。
最近父親に買ってもらった玩具で遊んでいるのだろうか。
5人組の、カラフルなスーツに身を包み地球を護る戦士達のテレビ番組は、元は故郷の日本で製作されたものを、アメリカがリメイクしたものである。
アメリカの番組にはない、敵と戦う前に自らの名を名乗るという、アメリカにはない斬新な内容がアメリカ人のハートをがっしりと掴んだらしい。
彼もその1人(彼は日本人だが)で、父にねだって5人の戦士がセットになっている玩具を買ってもらったのは、ついこの前。
特に青い戦士がお気に入りのようで、何処へ出かける時も、寝る時も、片時も離さない。
だから、母が呼んでも降りてこないのは、お気に入りの人形に夢中になっているからだと思っていたのだが……。

「………………」

眉を顰める。扉に耳を近づける。
聞こえてくる、彼と誰かの笑い声。
誰かを招いた覚えはない。母親は慌てて扉を開けた。
部屋の真ん中で、彼は座って人形を持って遊んでいた。
<span id="filled-circle">オレンジの髪で、ネグリジェ姿の女の子もいた</span>。
誰、と母親が悲鳴を上げる前に、遊んでいた彼と女の子の視線が母親に向けられ、女の子は驚いたような表情を浮かべ……。

煙のように姿を消した。

あ、と彼は声を漏らす。
母親は硬直した後、悲鳴を上げて彼を抱え上げた後、彼のために作ってやったうどんも忘れて、家を飛び出して行った。


また、別の日のことである。
多忙な父が珍しく休みの日で、その日は曇天だった。
父の仕事はとっても忙しくて、なかなか休みが取れなくて、だから父が休みの日は1日中遊んでもらうのが彼の家のルールだ。
明日はお休みの日だから、沢山遊ぼうなって前の日の夜にお父さんと約束して、久しぶりにお父さんと遊べるって楽しみにしていたのに。
前日の夜は、楽しみ過ぎてなかなか寝付けなくて、お姉ちゃんのベッドに潜り込んで、背中をトントンしてもらって漸く寝付けたのが深夜1時。
起きたら10時になっていて、寝坊したって慌てて起きたら、ザーという水が大量に落ちる音がした。
閉め切っていたカーテンを開けると、外は土砂降りの雨。
父と遊べるのを楽しみにしていた彼は、そんなあって見るからにガッカリしていた。
雨なんだから仕方ないでしょ、ってお母さんが窘めるけれど、滅多に遊べない父が、せっかく休みの日なのにこんなのってない。
喜怒哀楽を素直に出す彼は、頬っぺたを限界まで膨らませて、如何にも不機嫌ですと言ったオーラを隠さなかった。
お姉ちゃんが私と一緒に遊ぼうかって誘ってくれたけれど、お父さんと遊びたかった彼
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