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戦国異伝供書
第九十五話 負け戦その十一

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「大内家の軍勢まで至れぬ」
「それどころか毛利家の軍勢も満足に倒せぬ」
「これは厄介じゃ」
「どうしたものか」
 攻めてはいるが倒せない、それでだった。 
 いい加減どうしたものかとなり攻めることに躊躇しだした、それを見逃がす元就ではなく兵達に言った。
「あと少しじゃ」
「あと少しで、ですか」
「敵の勢いも落ちてきましたし」
「石見にも入りますし」
「それで、ですか」
「踏ん張るのじゃ」
 あと少しというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「あと少しです」
「戦います」
「そしてそのうえで」
「家に帰ります」
「皆で帰るのじゃ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
 元網も頷き戦う、彼は攻める中でも兵達に言っていた。
「決してじゃ」
「命を粗末にするな」
「そう言われるのですな」
「何かあっても」
「それでもですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「命を粗末にするな」
「そうしてですか」
「戦いそしてですな」
「生きる」
「そうせよというのですな」
「ここで死ぬべきはないというのじゃ」 
 元就、彼はというのだ。
「だからじゃ」
「それ故にですな」
「今は攻めても」
「それでもですな」
「左様じゃ、死ぬでない」
 元網もこう言って采配を執る様にしていった。
 そうして戦いつつ徐々に退いていき。
 元網はある朝兄に言った。
「どうもです」
「うむ、次第にな」
 元就もこう言った。
「敵の攻めも穏やかになってきてな」
「凌ぎやすくなってきましたな」
「攻められるとな」
 どうしてもとだ、ここで元就は元網に話した。
「領内に入られるとな」
「追い出そうとしてですか」
「戦う」
「そうなってですか」
「必死に戦う」 
 そうなるというのだ。
「だからな」
「石見に入るとなると」
「尼子家の領地はやはり出雲じゃ」
 この国が本国だというのはよく知られていることだ、石見も彼等の領地の域もあるが本土ではないのだ。
 それでだ、元就もこう言うのだ。
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