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戦国異伝供書
第九十五話 負け戦その七

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 尼子家の軍勢を戸惑いもさせて退いていった、元就は尼子家の軍勢を何度も退けつつ石見に向かっていった。
 石見に入ったところで元就は吉報を聞いた、それはというと。
「そうか、大内殿はか」
「はい、遂にです」
「大内家の領内に逃れらました」
「後はです」
「無事に戻られるとのことです」
「それは何より。では大内家の軍勢もこれからな」
 まさにとだ、元就はその話を聞いて話した。
「領内に入られる」
「そうなればですな」
「その時はですな」
「我等も退きますな」
「石見から」
「そうする、石見からな」
 まさにそこからというのだ。
「我等の領内に向かい」
「そしてですな」
「そこに入り」
「そしてですな」
「逃れる、そこまで何とか戦うぞ」
 そうするというのである。
「よいな」
「はい、ですが」
 ここで元網が兄に言ってきた。
「我等はもうです」
「かなり傷付いておるな」
「そうなっていますな」
 見れば毛利家の軍勢は数は然程減っていない、これは全て元就の優れた采配と兵達の決死の働き故だ。
 だがそれでもとだ、元網は自分達の軍勢を見て言うのだ。
「かなりです」
「疲れが見えるな」
「死んでおる者は少ないですが」
「傷を負っている者は多い」
「そうなっておりますな」
「わかっておる、しかしな」
 元就は弟の言葉にそれでもと返した。
「今はじゃ」
「耐える時ですな」
「これは覚悟のうえ、あと一踏ん張りでな」
 それでというのだ。
「我等は逃れられる」
「だからですな」
「あと少しじゃ」
 一踏ん張りというのだ。
「戦うぞ」
「そうしますな」
「皆の者飯はしっかりと食い」
 そしてというのだ。
「寝る時はな」
「寝よと」
「そう言われますか」
「しかと」
「そうじゃ、こうした時でも寝るのじゃ」
 勿論見張りを置いたうえでだ、それは忘れない。
「そして英気を養いな」
「また戦う」
「そうしますな」
「そして退いていく」
「そうしていきますな」
「左様、傷は手当てをしてな」
 そちらの話もした。
「今は堪えよ、傷口は必ずしかと水でしかと洗い布で巻いておけ」
「水で、ですな」
「そうじゃ、必ずそうせよ」
 元網にも答えた。
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