第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第44話 空鰓のUMA
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、依姫の姿がそこから消えた。
そこに衣玖が吐き出した爆炎が迫った。そして地面に着弾すると激しい爆発を発生させた。
対して依姫は少し離れた場所に出現していた。
「ふう、間に合いましたか」
間一髪といった風に依姫は額の汗を拭った。
依姫はこのまま縮地で爆炎をかわし続けるというのが作戦だろうか?
だが龍の権化と化した衣玖が生み出す破壊の奔流の規模は凄まじいものがある。このまま逃げの一手を続ければ、いずれ依姫の方が追い詰められるだろう。
しかし、依姫は余裕の態度でこう言った。
「まだ続けますか?」
その意味ありげな質問に対して、衣玖は言葉ではない形で答えた。
彼女の体が突如として光る。それはどこか何か想起させるものがあった。
そして予想通り、光が収まるとそこには人間型の姿に戻った衣玖がいたのだ。
ちなみに桃色のヒダがふんだんにあしらわれた服に黒のロングスカート。残念ながら彼女はきっちりと普段の服装に身を包んでいた。
勇美がこの場にいたら激昂していた事だろう。『女性が異形の変身から解けた時は、すっぽんぽんじゃないと男のロマンに反する』と。
「……随分おスケベなお弟子さんね」
「ええ、それに女の子なのに男のロマンって何なのかしらね」
依姫と衣玖は当事者のいない所で極めて失礼な考察をする。
だが、それらの読みは寸分たがわぬものなのだから問題ないだろう。
閑話休題。
「まさか私の限界が読まれますとはね。空気を読む者失格ですね。
──いつから気付いていましたか?」
「光のブレスを放った後ですね。それで貴方があの形態を維持するには妖力の消耗が激しいのだと」
「参りましたね」
そう言うと衣玖は付け加える。
そもそもあの姿をとったのは賭けだったのだと。依姫との力量の差を感じたからこそ正攻法では無理だろうと踏んでの事であったのだ。
「私の柄にもない事したと思いますけどね」
「いいえ、あのがむしゃらさ、勇美にも通じるものがあって素敵でしたよ」
「……いいお弟子さんを持ちましたね」
衣玖がそう微笑みながら言った後、暫しの間が開いた。
だが、それもつかの間の事。依姫も衣玖に微笑み返すと、はっきりとこう言った。
「ええ、勇美はいい弟子よ」
「そうでしょう、では行きましょうか、依姫さん」
「そうですね、永江さん。参りましょう」
そう言い合い、二人は今繰り広げられているだろう本日のメインディッシュの場へと赴くのだった。
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