第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第44話 空鰓のUMA
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て、光の収まった世界を目を凝らして見据える依姫であったが、さすがの彼女でも目を見開いてしまう光景がそこにはあった。
「永江さん、貴方……」
依姫は辛うじてそれだけを口にした。
彼女の視線の先にあったのは、リュウグウノツカイであった。
──それは衣玖を形容する比喩ではなく、銀色の体に赤い鰭を持つ体長の長い魚である、正真正銘のリュウグウノツカイだ。
それだけなら、さして依姫は驚きもしなかっただろう。問題なのは……。
「何て大きい……」
依姫の言葉通り、その体躯であった。ざっと見て全長は8メートルはあるものであったのだ。
衣玖はかつてリュウグウノツカイにしては小さいと言われていたが、それは人間型を取っていた時の事である。
だが、今の彼女はスタンダードなリュウグウノツカイと比べても、極めて巨体であろう。
「驚かせてしまいましたね」
巨大魚と化した衣玖が申し訳なさそうにいう。姿は変われど彼女の丁寧な性格は失われていない所に安心感を感じる。
「それが貴方の姿なのですか?」
その依姫の質問に対して、衣玖は首を横に振る。
「いいえ、ご安心下さい。この姿は私の妖力をありったけ肉体に注いで造った仮の姿ですよ」
それを聞いて依姫は幾分が安心した。
その事に対して衣玖は多少の訝りを見せる。
「それは余裕というものですか? 私のこの姿を見て」
言う衣玖の雰囲気が変わる。人間の姿であったなら、恐らく彼女らしからぬ邪な笑みを浮かべていた事だろう。
「これから私が行う攻撃を見てもその余裕を保っていられるでしょうか?」
言って衣玖は空高く舞い上がった。その優雅でありながら悠然とした姿は、正に『龍』そのものであった。
その流麗ながらも威圧的な様相を目の前にして、依姫は気を引き締め直す。
「これは余裕を見せてはいられないわね……」
そう言って、依姫は自分よりも高く聳える空の龍を見据える。
そして、遥か下方にいる依姫に、衣玖は照準を絞り、攻撃段階へと入る。
「【破貫「シャイニングボンバード」】」
衣玖の声が響く。といっても彼女は口を使って発声している訳ではなく、一種の念で言葉を紡いでいるようであった。
そして、衣玖の口に光の粒子が集約していき、瞬く間に彼女の口の周りに光の塊が練り上げられていった。
そうして一頻り光が拵えられると、それを衣玖が内部から押し出すように放出した。
衣玖の口からSF作品に登場する戦艦の主砲の如く光が打ち出された。
だが、依姫は慌てなかった。先程の光の吐息の時のようにやたの鏡を合わせるだけである。
依姫は再び石凝姥命をその身に降ろし宣言した。
「【反射「やたの鏡の守護」】」
それにより再度現れる神の鏡。
そして光の爆流はぐいぐいと依姫へと距離を詰めていった。
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