第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第42話 勇美、空へ
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『ある』人には分からない苦しみですよ、依姫さん!」
必死の形相で迫る二人に、依姫と衣玖は「ごめんなさい」と、取り敢えず謝っておいた。
「それはさておき……」
天子との傷の舐め合いから立ち直った勇美は、次なる目標に目を向けた。
「永江さん、会いたかったです〜。まずはお近づきの挨拶にキスして下さい♪」
と、勇美は猫科の肉食獣の如く衣玖に駆け寄った。
「ぬわっ、お近づきなのに話が飛んでいますよ。しかも何で名字で呼ぶのですか」
「永江さん程の素敵な方を気安く名前で何て呼べませんよ♪」
「そ、そうですか」
そう言われて衣玖は少し頬を赤くする。そのように言われて悪い気はしないからだ。
だが、その後でキスの件は丁重に断った。
そうこうした後、天子が話を仕切り直す。
「改めて。私の招待を受けてくれてありがとう。ようこそ天界へ」
天子はそのようにおもてなしの態度を見せたのだった。
「固くならなくていいわ、今はお父様もお母様も出掛けているから」
「もしかしてご両親に無断で私達を招待したのですか!?」
勇美はその事実に面喰らってしまった。さすがは『不良天人』と呼ばれるだけの事はあると思ってしまうのだった。
「まあ、そんなのは些細な事よ」
「いえ、とても重要な事ですよ!」
あっけらかんと言い放つ天子に、勇美は食い付く。
確かに勇美は彼女の両親の事は快く思っていない。
だが、親に対してふてぶてしく振る舞う事は道徳に反するのを勇美は知っているのだった。
「天子、勇美の言う通りよ」
そんな勇美に対して、依姫も彼女の肩を持った。
依姫も知っているのだ。彼女もまた自分の両親や師に対しては敬意を払わねばいけない事を。
永琳という素晴らしい師がいるからこそ分かる事であった。だからこの事は自分と同じ両親と師を持つ豊姫も同様の考えだろうと依姫は思った。
「まあ勇美ちゃん、依姫。私は天子位アバウトでもいいと思うな〜」
と、豊姫の弁。現実は非情であったようだ。
「おねえさま〜」
これに対して依姫はらしくない泣きの入った声を出すしかなかった。
「うん、さすが姉の方は話が分かるわね」
天子がご満悦といった風にのたまいながら続ける。
「それから豊姫、二人のお迎えご苦労様」
さらりと失礼な物言いをする天子。
実は年配の人に対しては「お疲れ様」でも上から目線の意味合いになってしまうのだ。
ましてや「ご苦労様」など、それ以外でも上から目線になる言語道断な言い回しなのである。
だが豊姫は気にした風を見せなかった。それが彼女の懐の広さを表しているのだ。
「これ位お安い御用よ」
「頼もしいわね。それじゃあ、報酬の天界の桃ははずんでおくわね♪」
「ちょっと天子……!」
「ご苦労様」では動じなかった豊姫だ
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