第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第41話 天子の招待状
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は、──こういう表現は些か卑猥であるが──ヒダヒダをふんだんにあしらったピンクの服であろう。下半身は黒のロングタイトスカートである。
次に目を引くのが赤い触覚のようなリボンを施した黒の帽子である。
後は紫色のショートヘアに赤い瞳の顔立ちであるが、それ自体は至極普通の要素である。
彼女の印象を強くしているのは、何と言っても服装の方であり、服装をノーマルな物にしたらきっと誰だか分からなくなる事儲け合いだ。
だが、勇美は彼女を見た瞬間に頬をほんのり赤く染めてしまった。奇抜な衣裳の中にある彼女の素朴な魅力を感じ取って心惹かれてしまったのだろう。
「初めまして綿月依姫さんに黒銀勇美さん。私は永江衣玖と申します」
勇美がそんな衝動に駆られている事とは知らず、衣玖は自己紹介をした。
「あ……」
対して勇美は放心状態となっていた。
「勇美……」
「あっ、はい!」
そこへ依姫に呼び掛けられて、勇美は漸く自我を取り戻す。
「貴方、大丈夫? どこか具合でも悪いのかしら?」
依姫は勇美の事を気遣い言葉を掛ける。
「いえ、大丈夫です。依姫さん、この人が」
「ええそうよ」
勇美に言われて、依姫は改めて説明する。
彼女、永江衣玖は天界に住む龍神の遣いで、妖怪化したリュウグウノツカイである事を。
「でも、その龍神の遣いさんが私の所へ?」
勇美は当然起こる疑問に首を傾げる。
その問いに対して衣玖は答える。
「それはですね、総領娘様からあなた宛てに招待状を預かって来たのですよ」
そう言って衣玖は一通の手紙を取り出し勇美に渡す。
勇美はそれを受け取りながらも疑問に思った事を聞く。
「総領娘様って誰ですか?」
「これは失礼しました。総領娘様というのは、天界の王の一人娘の比那名居天子様の事ですよ」
「ほええ……」
それを聞いて勇美は話が跳んでしまっていると思った。そんな凄い人から自分はお呼びが掛かったのかと。
「確かに渡しましたよ。それでは……」
そう言って衣玖は気品溢れる振る舞いで永遠亭を去っていったのだった。
「……」
それから暫し勇美は放心していたが、やがて気を持ち直して言う。
「天界ですか、面白そうですね」
「行く気のようね、勇美」
「はい。待っていて下さいね、永江さん!」
「なぬっ!?」
依姫はひっくり返りそうな声で言った。
招待の手紙を寄越したのは彼女ではなく天子であるというのに。
──これは一目惚れという奴か。こやつも早苗の事どうこう言えないなと依姫は頭を抱えるのだった。
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