第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第38話 外界っ子バトル:後編
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様もないやり取りを二人でしつつも、早苗は本題に入る。
「でも、その図体では私を狙うのは難しいんじゃないんですか?」
早苗は無駄のない指摘をして勇美に問い掛ける。
確かにそうだ。今勇美が操るハイクラーケンは巨体な分、人間サイズである早苗を狙うのは困難の筈である。
言うなれば、人間がすばしっこく飛び交う虫を狙うようなものである。
だが、勇美の表情もまた余裕のそれであった。
「……試してみますか?」
「余り嘗めないで下さいね」
互いに挑発めいた台詞を浴びせ掛けた後、動いたのは勇美であった。彼女は僕の大烏賊に迎撃命令を下す。
「ハイクラーケン、やっちゃって!」
その合図を受けて大烏賊は触腕を振り上げ、早苗へと振り翳した。
「無駄ですよ」
言って早苗はそれを悠々と避けてみせた。
当然であろう。振りが大きすぎるのだ。ボクシングで言えばジャブもフットワークも織り混ぜずに、いきなりストレートを繰り出すようなものである。
ましてや早苗という的は小さい上に宙まで舞っているのだ。
いくら威力が強力でも、当たらなければ意味がないのである。
「そんな大振りじゃあ、私には当りませんよ」
「確かにそうですね、でも忘れていませんか?」
「何を?」と早苗は言おうとしたのに対して、勇美は言葉の代わりに行動で答えた。
ハイクラーケンから触腕の一撃。それを当然早苗はかわす。
だが、次に彼女に飛び込んで来たのは、触腕となる物以外の残りの足による攻撃だったのだ。
「!!」
「分かりましたか? イカの足は10本あるって事ですよ」
勇美は得意気にそう言ってのけた。
人型の存在なら一つの腕を攻撃に使ったら、同時にもう片方の腕は使えない。
しかし、腕になる部分が三本以上の存在ならば同時に扱える箇所も増えるというものである。
そして、鋼鉄烏賊の攻撃は苛烈を極めていった。一度の攻撃をかわしても、すぐに次の手が打ち放たれ、しかもそれが二本以上の足から繰り出されるのだ。
加えて早苗の身体は人間のもの。故に彼女は疲弊し動きが鈍っていった。
「今だ!」
そのチャンスを見逃す勇美ではなかった。よろめく早苗目掛けて触腕と触手の計六本を一気に振り下ろしたのだ。
そして、それらは全て早苗を捉えた。数多の金属鞭は彼女を容赦なく弾き飛ばした。パァーンという風船が割れるかのような衝撃音が辺りに鳴り響く。
「きゃあっ……!!」
突然の衝撃に悲鳴を上げる早苗。そして空中でバランスを崩した彼女に、遅れて脳に痛みの信号が送られたのだ。
「くうっ……」
痛みに呻く早苗。その中で彼女は思った。
──この子、意外とやり手だと。自分よりも後輩だと思って甘く見ていたようだと。
「……!」
そこで彼女は何かが弾けるかのような心持ちとなる
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