最終話 文句なしの大勝利
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とが、よくわからないんだけど……」
平静を取り戻していた心に緊張が訪れる。胃がチクリとした。
「君に傷を負わせた犯罪者たち五人への処罰だ。我々の星でのやり方と同様、消去しようか?」
「待ってよ。地球には介入しないんじゃないの」
「それとこれとは別だ。性暴力犯罪は銀河レベルの重罪といっていい。生命への冒涜だ。被害者が望むなら、我らは躊躇なく介入する。加害者が君たちの社会で重要な地位に就く者であろうと例外はない。抹殺する」
声のトーン自体は相変わらず低いままだが、彼の言葉には怒りが滲んでいるのが理解できた。
「いきなり、そんなことを言われても」
私は言葉に詰まった。加害者どもは一人を除き、どいつも数年の実刑判決だった。いまでは全員出所しているだろう。過去のことなどなかったこととして何食わぬ顔で社会に復帰し、家庭を築いているかもしれない。もしかしたら、また罪を犯しているかもしれない。私は判決以降のあいつらのその後については、知らないように努めていた。
「他の調査員が私以外の被害者にインタビューしてるんだよね。犯人への罰を望んだ人はいるの?」
「いる」と彼は即答した。「私が降り立ったのは遅いほうだ。すでに調査を終えた同胞もいる。その者の一人が調査対象とした被害者は犯人への強い罰を求めた。犯人が言い逃れようのない罪を犯したことは事前に調査済みだ。依頼を受けた調査員は加害者を拘束し、痛みを伴う方法で処刑した。無論、異星人の仕業とは思われない細工をして」
「その人は許せなかったのね」
「君はどうする?」
私は目を閉じて考えた。乾燥機は運転を終了している。室内には静寂しかない。
「……何もしないでいいよ」
「加害者を許すのか? 確かに法律上は罰を受けているが」
「私は絶対許さない」
「ならば、なぜ?」
「もし、あなたの力を借りて、私の意志であいつらを処罰したら、私はやつらを許さないといけない気がする。憎み続けるわけじゃないけど、でも、絶対に許すこともない。許さない気持ちを捨てないためにも、このままでいい」
「そうか」
「だからって、罰を望んだ他の被害者のことは否定しないよ。その人にとっては、考えた末の決断だったんだろうし。それで救われるかもしれない。私は違う選択をしたってだけ」
「承知した。それが君の望みなら」
「ちなみにいま言った、『私は絶対許さない』って言葉。被ったのは偶然なんだけど、実際に性暴力被害に遭った人の手記のタイトルにもあるんだよ。映画化もされてる」
「なるほど。事前リサーチで当たったデータベースにはなかったようだ。見落としていたかもしれない。あとで調べてみよう」
「いろんな人の気持ちに触れてみて。皆、苦しみ方は違うから」
「そうするよ。直接、対面できるのは君だけだがね。ところで、本当に礼はいらないのか。
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