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戦国異伝供書
第九十五話 負け戦その三

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「そしてです」
「尼子家の軍勢が城から下りてきてです」
「あの者達と合流してきています」
「そうなっています」
「尚且つです」
 さらに陶に言うのだった。
「こちらに攻めんとしております」
「どうされますか、ここは」
「一体」
「ううむ」
 陶が難しい顔になるとだった、ここで。
 元就は陶ではなく義隆に言った。
「ここは退きましょう」
「そうすべきか」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうしましょう」
「まだ数は優位だが」
「それでもです」
 こう強く言うのだった。
「最早です」
「戦えぬか」
「はい」
 そうだというのだ。
「国人達があちらについては」
「そして攻めんとしてきているからか」
「はい、退くなら」
 それならというのだ。
「ここはです」
「退いてか」
「また時を見て」
 そしてというのだ。
「そのうえで」
「そうか、ここはか」
「どうされますか」
「殿、まだです」
 陶はまだ言った。
「まだ戦えます」
「ではどうするのだ」
 義隆はその陶に問うた。
「一体」
「はい、尼子家の国人達と尼子家の軍勢を退け」
 そしてというのだ。
「あらためてです」
「城攻めに戻るか」
「そうすればいいです」
「そう言うか」
「ですから」
 ここはというのだ。
「戦うべきです」
「お主はそう思うか」
「左様です」
「そうか」
「いえ、それもです」
 元就はここで退かねば自分達も危ういと見て強く言った。
「今のうちにです」
「退くべきか」
「はい」
 こう義隆に話した。
「敵には新宮党もおりますし」
「あの強者揃いで知られる者達であるな」
「はい、今のうちにです」
「退いてか」
「難儀を逃れるべきかと、国人達が尼子家に寝返った今ここにこれ以上残ることは危ういです」
「しかし毛利殿」
 陶は元就に食って掛かる様にして言ってきた。
「まだ我が軍は敵より優勢にありますぞ」
「数のうえではですな」
「士気も高く兵糧も武具も余る程です」 
 そこまであるというのだ。
「ですから」
「それ故にですか」
「ここで寝返った国人達も尼子家の軍勢も逆に攻め」 
 そうしてというのだ。
「そのうえであらためて」
「月山富田城を攻めるべきとですか」
「それがしは思いまする」
「左様でありますか」
「瀬戸山城も足掛かりにありますし」
「では瀬戸山城がある限りですな」
「我等は戦えますぞ」
 陶がこう言った瞬間にだった、本陣に大内家の旗本がまた一人駆け込んできた、そのうえで声を震わせて言ってきた。
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