最終節「かばんの隠し事」
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
ったい?」
「いつもの事だ。2人ともそれくらいにしておけ。傷もまだ癒えていないだろうに……」
「ここで傷口開いても、自業自得だからね?」
純からのぐうの音も出ない正論に、クリスは響の頬を引っ張っていた手を離す。
「ちぇ……わかってらぁ」
「へへへ……」
すると、未来はふと思い出したように響と、そして翔の顔を交互に見る。
「ねえ、響、翔くん……」
「ん?」
「なんだ?」
「身体、平気? おかしくないよね?」
未来の言葉に、二人は顔を見合わせ、そして笑った。
「心配性だなぁ、未来は……。へへ、わたしと翔くんを蝕む聖遺物は、あの時全部きれいさっぱり消えたんだって」
「ああ。謝るどころか、今俺と響がこうして笑っていられるのは、小日向のお陰だ。胸を張れ、小日向。お前は自分の手で、友達を助けたんだ」
「わたしの手で……」
二人の笑顔に、未来は喉元まで出かかっていた言葉を鞄の中へと隠して捨てた。
(そうだね……。わたし、もう泣かない。謝ることもしない。まだまだちっぽけな勇気しかないけど、いつかわたしも強くなって、きっと響に追いついてやるんだからッ!)
少しだけだが、彼女は前進した。
彼女の名は未来。先へと進み続ける事こそ、その由来なのだから。
「小日向さん? その……あの時は……」
そして未来は、同じく目標へと前進中の彼に微笑みかける。
「……加賀美くん。一緒に頑張ろうね?」
「……えッ?」
「ふふ、内緒っ」
「……ッ!」
本日の勝敗、未来の勝ち。
「でもね──胸のガングニールは無くなったけれど……あの日、奏さんから託された歌は、絶対になくしたりしないよ」
響は仲間達を見回すと、胸に手を当てながら呟く。
翼とクリス、純は釣られて微笑み、一同は繋いだ手で守った今日の空を見上げる。
二課本部の甲板では奏が。病室の窓からはセレナが。留置場のフェンスの向こうからはマリア達が。それぞれ違う場所で、同じ空を見上げていた。
「それに、それは私だけじゃない。……きっとそれは──」
「ああ……きっと、その歌は──」
誰の胸にもある、歌なんだ……ッ!
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ