最終節「かばんの隠し事」
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にともなく呟く。
「マムが未来を繋げてくれた……」
「ああ……そうだな……」
「ありがとう、お母さん──」
ツェルトは、マリアの肩をそっと抱き寄せる。
再び失われた右腕には、二課に置いてきていた義手が再び着けられていた。
「マリアさん……これ」
マリアが振り返ると、響はガングニールのペンダントを差し出す。
それを一瞥すると、マリアは微笑みながら言った。
「ガングニールはキミにこそ相応しい」
「……ん……」
響はペンダントを握り締め、頷いた。
「だが、月の遺跡を再起動させてしまった……」
「バラルの呪詛か」
「人類の相互理解は、また遠のいたってわけか……ッ!」
ネフィリムとの戦いの中で、全世界70億の人類はひと時の間だが、繋がった。
しかし、再び世界にはバラルの呪詛が満ちたことで、再び人類はバラバラになってしまったのだ。
「──へいき、へっちゃらですッ!」
しかし、それでも彼女は明るく笑った。
「──ッ」
「「……」」
「どうしてそう言いきれるんだ?」
首を傾げるF.I.S.の一同。
ツェルトからの問いに、響は笑ってこう答える。
「だってこの世界には──歌があるんですよッ!」
「ふッ……そうだな。歌は世界を繋ぐ。それは俺達が、この世界で誰よりも知っている事だ」
「ふふッ」
笑い合う翔と響。
「歌……デスか」
「いつか人は繋がれる……だけど、それはどこかの場所でも、いつかの未来でもない……確かに、伝えたから」
「……うん」
調の口から語られた言葉。それだけで、響と翔は全てを察した。
殆ど言葉も交わせなかったけど、彼女はきっと旅立ったのだろう。
その胸に、ようやく確かな希望を抱いて……。
「なあ、翼。あたし、まだ何が何だったのかさっぱりなんだけど……」
「奏、しーッ! 詳しい事は後で説明するから……」
「お、おう……」
死からの復活。そしてここまで「黒幕はウェル」程度の最低限の情報しか持たないまま、取り敢えずノリと勢いで戦っていた奏は、空気を読んで沈黙を選択した。
「立花響。キミに出会えて、良かった」
「風鳴翔。俺が今ここに立っているのは、お前のお陰だ。ありがとう」
「いや、まだだよ。もう一仕事、残ってるんだろ?」
そう言って翔は、着陸したエアキャリアの方を見つめる。
「ああ……そうだったな」
「会えるのはきっと、もう少し先になっちゃうけど……せめておはようくらいは、言わなくっちゃね」
なんだか、とっても長い夢を見ていたような気がする。
大人になったマリア姉さんと、ツェルト義兄さん、それに背が伸びた月読さんと暁さんが、マムと一緒に頑張っていたような……。
わたしは確か
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