最終節「かばんの隠し事」
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当の未来は周囲の空気を感じながら、次の言葉を紡いだ。
「……経緯はどうあれ、貴方のおかげで、わたしは友達を助ける事が出来ました」
─そんなに警戒しないでください。少し、お話でもしませんか?─
「響も翔くんも、きっと私の事が無くても無茶をしてたと思います」
―きっとあなたの力になってあげられますよ―
背後で響がビクンと身体を震わし、両脇からクリスと翼に肘で小突かれている。
翔とツェルトは溜息を吐きつつ、認めざるを得ない事実に苦笑いしていた。
「貴方が力を貸してくれたから、私は響を助ける事が出来たんです。だから──」
ありがとうございます。
少女のそんな告白に、ウェルは呆気にとらていたが、やがて肩を震わせ始める。
「ふふ……ふ、ひひッ! あぁはっはっはッ! なるほど、僕は君たちにとっての救世主ッ! 英雄ってわけですかッ!」
「結果的には、ですけどね。ふふふ」
「いひひひッ! いやいや、実に愉快ですよッ! あ〜はっはっはッ!」
朗らかな空気で笑い合う被害者と加害者。この奇妙な光景に、その場の誰も口を挟めない。
しかし、自衛隊員が、もういいか?と未来に尋ねると……
「はい──あ、いえ、あともう一言」
何を?と隊員が尋ねるより先に───
「ひぃ〜ひっひっ、ヒベギャッ!?」
馬鹿笑いを続けるウェルの横顔に、一発のビンタがフルスイングで振り抜かれた。
「いたた……」
よほど力を込めたのだろう。叩いた未来が手を振って痛がり、叩かれたウェルは地面に倒れ込んだ。
倒れたウェルを見ながら、未来は言い放つ。
「それとは別に、私を操って友達を傷付けさせたお礼です」
そう言ってにっこりと笑う未来に、今度こそ誰も口を開けなくなる。
翔と響は改めて、未来を怒らせてはいけない事を再確認した。
そして、同じく操られた奏はというと、
「あっははははは……ッ! こいつは傑作だッ!」
これには思わず腹を抱えて爆笑していたのであった。
「月の軌道は正常値へと近づきつつあります。ですが、ナスターシャ教授との連絡は……」
「ぬぅ……」
「残された命を懸けて、月の落下から世界を救った。彼女こそ、本物の英雄だったのかもしれないわね……」
ツェルトから切り離されたネフィリムの右腕が入った円筒状のケースを手に、了子が呟く。
弦十郎と緒川は、タブレットから目を離し、空を見つめている装者達へと視線を移した。
夕焼け色に染まりゆく空。水平線の向こうへと沈んでいく夕陽。少年少女は地球を離れ、小さくなっていく月を見上げる。
マリアの首から下がる、セレナの形見のペンダントは、完全に壊れてしまっていた。
彼女は愛する人と空を見上げながら、誰
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