最終節「かばんの隠し事」
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ネフィリムが倒され、バビロニアの宝物庫は完全に閉じられた。
力を使い果たした装者達の緊張が途切れ、ギアを解除しようとしていた……まさにその時だった。
「ぐ……ッ!? うぅ……ッ!」
一足早くギアを解除したツェルトが、右腕を抑えながら唸り始めたのだ。
「ツェルトッ!? どうしたのッ!?」
転びそうになりながら、慌てて駆け寄るマリア。
調と切歌も、這いながらツェルトの方へと向かおうとする。
「く……来るなッ!」
「「「ッ!?」」」
ツェルトは右腕に装着していた、赤鋼の手甲を外す。
そこには……不気味に胎動するネフィリムの右腕が、ツェルトの腕を侵食しようと蠢いていた。
「そ、それは……ネフィリムッ!?」
「ぐッ……あああッ……翔ッ! こいつを切り落とせッ!」
「……ッ!?」
ツェルトは翔の方を見ると、痛みを堪え、ネフィリムの侵食に耐えながら叫んだ。
「お前が纏う生太刀には……生命を、吸い取る力がある……ッ……切り落とすなら今しかないッ! 俺の腕が喰い尽くされる前に、早くッ!」
「ツェルト……ッ!」
「やれッ! もう一度俺を……助けてみせろよッ! ファルコンボーイッ!」
「ッ! ……わかった……」
彼の目は真っ直ぐに、翔の目を見ていた。
翔を信じ、自分の運命を委ねる。
その覚悟を見せられたのだ。翔は躊躇いを斬り捨て、生太刀のアームドギアを形成した。
「おおおおおおッ!」
「ツェルトおおおおおおッ!!」
誰もが呆気に取られて口を開け、マリアの叫びが海岸に響き渡る中。
裂帛の叫びと共に、翔はツェルトの腕に寄生した最後の巨人を切断した……。
ff
戦いが終わり、海岸では事後処理が始まっていた。
「ウヒヒヒヒ……間違っている、英雄を必要としない世界なんて……。ウヒ、ウヒヒ……」
手錠をかけられたウェルが、武装した自衛隊員に連行されていく。
未来はウェルに駆け寄ると、呼び止めるように声をかけた。
「待ってください!」
訝しむ自衛隊員と響たち。
「少しだけ……話をさせて下さい。お願いします」
少女の真剣な眼差しに、自衛隊員達は頷き、一歩下がる。
「……なんの用ですか?」
煩わしげなウェルの視線を受け止め、真っ直ぐに見つめ返す未来。
数秒の見つめ合いの後、未来は瞳を閉じ……、
「ありがとう、ございました」
感謝の言葉と共に深々と頭を下げた。
「────────は?」
理解できない感謝の言葉にウェルは間の抜けた声を漏らす。
恨み言の一つでも吐かれるのかと思えば、まさかの感謝。まるで意味が分からない、という顔だ。
それは響たちも同様であり、未来以外の全員が困惑している。
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