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性暴力が星を滅ぼす
第5話 いつか見た未来
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の発言には心底、憎悪を掻き立てられた。そして、実際、あいつだけが実刑ではなく、執行猶予だった。あいつは、入れなかったから、裁かれなかったのだ。事実、裁判官はほざいたのだ、「行為の重さを考慮して」と。記憶としては留めているが、感情はなんとか心の奥底に仕舞い込んでいた。くやしさと憎しみと絶望。カウンセラーにも、このエテ公にも打ち明けなかった、最悪の感情が呼び起こされてしまった。

「落ち着いてくれ」
「落ち着けるわけないだろ! ふざけんな!」
 頭に血が上った私は椅子を蹴り上げ、ポスターを乱暴に引き剥がし、漫画雑誌を壁に投げつけて暴れた。
「畜生! なんでだよ! なんで、こんな!」
 言葉にならない。憤りが口を動かす。
「頼む、冷静に……」
「うるさい!」
 私は癇癪を起こした子供みたいに、奇声を発しながらテーブルを叩き、頭を掻きむしり、歯を食いしばった。散々喚き散らすと今度は腹部に張りと痛みが生じ、うずくまった。
「ふうううう……ふうううう……」と息が漏れる。お腹を擦る。「痛いよ、痛いよ」と繰り返す。鼻水が垂れる。涙は出ない。
 今度はさらに吐き気が込み上げる。そして、息が切れる苦しさが訪れ、視界から色が消えていく。画面が回る。私はメリーゴーラウンドに乗っていた……。

 ×××

「いたな、逆インフルエンサー」
「その呼び方やめてって」
 校内のベランダに肘を乗せ、遠くにうっすら見える水力発電所をぼんやりと眺めていた私の肩を叩いたのは恵里だった。
「この前、貸してくれたビデオさ、面白かったよ」
「結局、見れたの?」
「うん。物置にあったビデオデッキを引っ張り出して、試してみたら映ったよ。VHSっていうの? ビデオテープで映画を見るなんて初めて。うちのパパも懐かしがってた」
「貸した映画、DVDにはなってないみたいだね。小さい頃、父さんに言われて片付けたビデオテープの内、たまたま一本だけ捨て忘れてたビデオがまさか、恵里の見たがってた映画だったなんて、すごい偶然」
「やっぱ、潜在してるわー」
 恵里は腕を組み、一歩後ずさりつつ、感心したような目で私を凝視する。
「なんのこと?」
「大原礼奈、あんたは持ってるよ。偶然なんかじゃない。無意識でも潜在的な何かを。インフルエンスがあるって。こっちは結構、礼奈に感化されてるんだよ? あたしにもっと影響を受けさせてよ」と恵里は一歩踏み込み、私の薄い褐色の頬を人差し指で突く。私はそれを面倒くさそうに払う。いつものやりとりだ。
「いいから、いいから。子供の頃、タイトルは覚えてないけど、忘れられないテレビドラマを見たことがあってね。海外の古いオムニバスドラマで、なんか恐竜時代に時間旅行した人が蝶だったかな、それを踏んづけちゃって。それから未来に戻ったら、大統領が変わってるっていう
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