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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第八十話六芒郭顛末(上)
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れだ!!」
 枝がへし折れ、足元に転がる。
「‥‥若」「大辺か」
 笑うか、と豊久が張り詰めた声で尋ねると首席幕僚は笑いませんよ、と頭を振る

「大辺、俺に〈皇国〉4000万の命運を背負う器があると思うか?」
 大辺が目を閉じ、息を吐く。
「我々は国家暴力の管理者であると言ったのはあなたです。そして我々は暴力の執行をする為にこの場におります。
であるからには、器の有無なぞどうでも良い話でしょう。私はついていきますし、どうにかしようと手助けしますよ、罷免されぬ限りは」
 薄闇に隠れているが常の仏頂面ではなく微笑を浮かべて答えた。

「ハハハ……手厳しい奴を首席幕僚にしたものだな、わかった、わかったよ」
 豊久がふてぶてしい笑みを張り付けるのとほぼ同時に大辺は常の仏頂面に戻っていた。
「支隊長、御判断を」

「‥‥優先順位を下げよう、周囲の制圧を重視して最悪の場合は本営の制圧を放棄する――大天幕への突入は第十二大隊が行う、前衛は迂回して新城支隊のと連絡をとり突破を支援せよ、達せ」

「かしこまりました、支隊長殿」
 大辺の背中を見送り、豊久はほう、と溜息をつく。
 ――選択の余地がないのならば己の鼎の軽重を問うな、か。
 大辺が少佐に上がって数年間を軍監本部戦務課で過ごしていたことを思い出す。彼も官吏や参謀に徹しているように見えても内面は存外不器用なのだろうな、と豊久は感傷に手綱をつけようと努力しながら支隊本部の将校達の下へと歩みを速めていった。




同日 午後第十刻半 第二軍団司令部
東方辺境領鎮定軍第二軍団第9師団〈マクシノス・ゴーラント〉第1旅団長 エーミール・フォン・ドブロフスキ

 第二軍団司令部は活気に満ちていた。恐らくこれほどの熱はアラノック中将が健在であった時の龍州追撃戦以来だろう。
「警戒網を密にせよ、燐燭弾を切らさず、各銃兵隊を集結させ、防衛線を構築するのだ。
騎兵はあくまで支援に徹しろ。東部、西部の部隊から銃兵連隊を抽出し、軍団、旅団の司令部の防衛に回せ」
 だがその熱を熱病に魘される者の如きそれのような印象に変えてしまうのが軍団参謀長から司令官代理へと肩書を変えたラスティニアンであった。
「本営には」「不要だ。放置せよ」
 作戦主任の進言をにべもなく切り捨てる。
「司令官代理、よろしいのですか」
「私が命令する、そうだ、私の、軍団司令官代理の発令だ」
「‥‥はっ」
 敵の兵数すらも分からない。ならばどうする、単純だ。見捨てるしかない。
 ユーリアが主力を割いた東方辺境領の第15師団を見捨て、燐燭弾と銃兵列の壁を構築し、うまくやれれば敵を駆逐する。
 本来であれば拘束するだけのつもりであったが、蛮軍が動くのであればもはや徹底的に全て
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