第五部〈皇国〉軍の矜持
第八十話六芒郭顛末(上)
[3/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
織内の人間の相互信頼を型作るものであり、個人の良心において共有されるべきものである」
すう、と息を吸うと声色が変わった。朗々と瀑布のような迫力のある声へと転ずる。
「さて諸君!見るが良い、我々が眼に映るのは何か!そこにいるのは我々の数ヶ月間の平穏の為に身命をとして戦い抜いた勇者達だ!そしてそれを取り囲むのは侵略者達だ!
私は保証しよう!これは御国の法に則り軍の役目を果たす護国の戦であると!
何故なら我々は内地の東半分を制しようとする敵の心胆寒からしめる戦だからだ!
私は保証しよう!この戦は国軍統帥の理性が振るう戦であると!何故ならこの戦は幾万の兵士が身命を賭しながら紡いだ戦理の果てにここにあるからだ!
私は保証しよう、この戦はまったく良心をかけた戦であると!
何故なら我々は我々の為に血を流した兵らを救う為に戦場へ赴くからだ!」
視線を向けられた将校達は背筋を伸ばす。
「諸君、私は諸君らの上級にある国家暴力の管理者として諸君に告げよう、『正義は我らにあり、奮って暴力するべし』と」
「……兵と下士官にはこう伝えるがよい。取り込まれた戦友を救う“美味しい役”が回ってきた!貴様ら自身を英雄譚に刻め!!
矜持は自らに与えるもの、名誉は他人に与えられるもの!死しても誰にも後ろ指を指されず、生きて戻れば英雄だ!
この作戦に失敗は許されない、各員が任務の趣旨を理解し、全うせよ!
‥‥それでは作戦開始準備にかかれ」
馬堂大佐は北領で最後まで戦いぬいた人間であった事を彼らは改めて認識した。
・
・
・
作戦の開始は即ち〈帝国〉軍に対する悲劇と同義で会った。
馬堂大佐は砲兵出身でありながら〈皇国〉剣虎兵将校と比しても最精鋭といえるほどの運用経験を持っている。
その彼が持ち込んだ経験は幕僚、軍官僚としての経験を持つ彼自身と軍監本部出身の幕僚達によって咀嚼され、剣虎兵運用教本に大いに新たな筆を食われることになった。
「敵将校下士官を優先して始末しろ」
「集結する銃兵への突撃を行え」
「敗走した兵隊を盾として敵の統率を叩き潰すのだ」
特に〈帝国〉軍との実戦に投入を決定された二個大隊は第十四聯隊と一月かけて合同訓練を行うことで徹底した方針を叩き込まれていた。
馬堂大佐が重視したのは砲兵、銃兵との連携である。新城少佐と異なるのは、新城少佐は剣虎兵を主導とした戦術を構築していたのに対し、馬堂大佐は砲兵、銃兵、更に言えば周辺部隊との協働を視野にいれた戦術を構築していたことである。
それは馬堂大佐の構想能力がより優れているというわけではない――もしそうであるのならば新城直衛は砲兵と銃兵により一万近くまで膨れ上がった敗残兵を抱え込んで後衛戦闘を行い、そのまま六芒郭に立てこもり熾烈な戦闘を行えるわけもない。
これは前線
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ