第4話 絶滅犯罪
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しい悪辣な罪であることは誰しもわかっているはずなのに、減らないんだ。いまの状態が続けば、近い将来、我らは性暴力が原因で滅びてしまうかもしれない」
「いくらなんでもそれは……」
「ありえないと思うのか?」と彼から言われた私は返す言葉が見つからず、口をつぐんだ。
「研究は続けている。だが、被害者を救えず、加害者は止められない。どうすればいい? クソっ」
悪態をついた彼は拳を握りしめ、テーブルを強く叩いた。それが彼自身の意志なのか、猿の本能に依るものなのかは判断できない。
「あなたでも『クソっ』なんて言うんだね。もっと、ロボットみたいな性格かと思ってた」
「みっともないところを見せてしまったようだ」
「もう『すまない』はいいから」
「君は他者の気持ちがわかる人だな。私の相手が君でよかった」
「ありがと。でも、私なんかで役に立てることはないかもよ。専門的なことはよくわからないし」
「君が生きてきた上で感じたこと、考えたことを教えてくれればいい。無論、事件の詳細を語る必要はない。知りたいのは君の強さだ」
「強さって言っても。いまだって薬に頼ってるし、乗り越えたわけじゃないよ。確かに昔よりはよくなったけど、何かきっかけがあったわけでもなければ、支えになる信念だってなかった」
「ならば、より一層、君が強いということなんじゃないのか」
「ごめん、『強い』って何度も言われるとあまりいい気分がしなくて」
「わかった。もう言わない。とにかく、私は君の話が聞きたいんだ。そこから、解決の糸口が見つけられるのではないかと期待している」
「私の話か。そこまで言うなら。でも、ちょっと気が重いな」と私は視線を床に落としながら言う。続けて、「やっぱり、何かお礼もらおうかな」と、エイリアンに対してか、ただの独り言かわからない小ささでポツリと言った。
(続く)
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