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性暴力が星を滅ぼす
第3話 彼女たちの顔
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が上げられる」
「そうなんだ」と軽い相槌を打ち、私は外宇宙の種にまつわる話を聞いていた。普通なら、彼らの詳細な見た目や社会構造、文化、科学がどうなっているのか根掘り葉掘り聞くべきかもしれないが、なぜか関心が沸かなかった。
「その時期になると、そういう犯罪が増えるの?」
「犯罪率とはあまり関係ない。繁殖期であっても、求愛する特定の相手と愛情を踏まえ、お互いの合意があれば行為に及ぶ。また、期間外であっても、愛情表現としての性行為はありうる」
「まともだね」
「普段ならな。だが、相手の合意なしに無理矢理に性行為や性的な暴力が行われてしまう場合がある。これは繁殖期間とは関係なく、起こっている」
「法律とか警察みたいなものはあるんでしょ」
「もちろん。性犯罪者は厳罰に処する。総じて消去、つまり死刑だ」
 死刑。犯人たちの裁判で、当時の私がやつらに望んでいた裁きだ。
「それでも、なくならないんだ。厳罰化、薬による欲求の制御、道徳教育の徹底、あらゆる手を試しているが一向に減らない」
 彼は息を吐く。猿の目玉は黒光りするだけだが、そこには落胆の色が浮かんでいるように思えた。

「進化レベルでは幼い君たちに比べ……失礼、見下すわけじゃないが、我々は進化の過程で多くの困難を克服してきた。貧困、差別、戦争、難病、環境破壊など、いまでも、まったく起こらないとは言わないが、基本的に生じることはなく、起きたとしてもすぐに解決できる問題だ。現在の地球の情勢から見れば、ユートピアに映るかもしれない。それなのに……」
 彼の言葉が途切れる。私は黙って待った。手元にある漫画雑誌を裏返し、少し離れたところにやった。グラビアアイドルの仕事を否定するつもりはないが、いまこの場で、肌を露出した女性の写真は見たくない。
「性犯罪の発生率は減らないどころか、上がっているんだ」と、しばらくしてから彼は続きを言った。続けて、「我らの社会には、いわゆる<性産業従事者>の仕事はない。かつては存在していたようだが、進化の過程でなくなった。法律で禁止されているし、やろうとする者もいない。だが、この非常事態を受けて、一度だけプロジェクトとして、勇気ある志願者を募り、試験運用したことがある」
「酷いことするのね」
「承知している。人道的ではないが、事は深刻だからな。結果は失敗した。犯罪率は変わらず、志願者らは精神にダメージを負ってしまった」
 それを聞いて、姿かたちもわからない志願者たち、彼女たちの顔を思い浮かべようとした。
「さっき、加害者は処刑すると聞いたけど、被害者へのケアはどうなってるの」
 彼は「それはできない」と一言、口にした。
「真面目に言ってるの? 最低」
「そうじゃない。したくてもできないんだ。なぜなら、性暴力を受けた被害者は間を置かずに自らを消去、自殺してしま
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