第84話『捜索』
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躇ったが、親友を前にして逃げる訳にはいかない。晴登は細い道に構わず走り出す。他の人たちも後をついてきた。
「大地! そこに居るのか?!」
大きな声で呼びかけながら、先へ先へと駆け抜ける。足場が悪かろうが、枝が邪魔だろうが、知ったことか。行かなきゃならないのだ。
その時、視線の先で一筋の光が煌めく。
「大地!」
「え、晴登!? 何でこんなところに・・・いや、それどころじゃない! 悪いが急いで引き返してくれ!」
「え? ちょ…!」
光の正体は、大地の持つ懐中電灯のものだった。晴登は再会したことに安堵したのだが、どうも大地たちの様子がおかしい。というか、やけに焦っているように見える。
「ほら、戻った戻った!」
「おい、押すなって! どうしたんだよ?!」
「話は後だ! 今は引き下がってくれ!」
狭い道ゆえに追い越すことができない大地は、焦りながらも晴登たちを追い返す。理由がわからないのだが、こうなったら従うしかあるまい。
大地率いる1組1班と合流した一行は、怪しいルートから急いで脱し、ゴールへと向かうのだった。
*
正規ルートに入ってからゴールまでは早かった。もう何の仕掛けもない、ただの真っ直ぐな道なのだから当たり前ではあるが。
「は〜着いた〜!」
「死ぬかと思った〜」
大地たちはゴールに着くなり、その場に座り込む。彼らはかれこれ30分以上、森の中で気を張っていたのだ。それがようやく緩んだと言ったところか。
「無事でしたか、1班の皆さん」
「先生」
声のした方を見ると、そこには山本が立っていた。その表情からは安堵の気持ちが読み取れる。
何せ自分の担当である1組の生徒たちが森で迷い、それを1組の生徒たちが捜索に向かったのだ。心配するのも当然だろう。
「すいません先生、俺のせいで…」
「いいんです。戻ってきてくれればそれで。その代わり、何があったのか説明して貰えますか?」
「はい」
山本に促されて、大地は迷った経緯を話し始める。まぁ大方の理由は、彼が方向音痴だからということで片づけられた。班員も納得し、大地は申し訳なさそうに謝っている。
しかし晴登には、1つだけ気になることがあった。
「なぁ大地、さっき叫んだのはなぜなんだ?」
そう、彼らが絶叫した理由だ。あのお陰で見つかったと言っても相違ないが、ではなぜなのか。あの道が正しかろうと誤っていようと、肝試しの仕掛けは発動していないはずだ。それなのに、どうして彼らは揃って叫び声を上げたのか。
それが気になったから訊いてみたのだが、途端に大地は肩を抱いて震え始めた。
「お、おい、どう
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