提督と早霜のこっそり賄いメシ・2
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よると、磯風の奴は自信満々に俺に教わった料理『だけ』は作れるようになったらしい。だが、磯風の奴はそれ以外の料理を学ぼうとせず、同部屋の奴等での食事会の磯風が当番の際には毎回同じメニューばかりで辟易としていたらしい。そこで駆逐艦達は一致団結、料理の美味い奴を中心に『磯風でも作れそうな簡単なレシピを教えて欲しい』と頼み込み、少しずつではあるが磯風に教えているらしい。
「ははぁ、それで磯風でも作れそうなメニューにはマーキングしてあるわけだ」
「はい、その通りです」
「ふ〜ん、アタシまだ磯風の料理って食べた事無いんだよねぇ。……そんなに酷いの?」
天霧に尋ねられ、重苦しく頷く俺と早霜。磯風の料理は思い出しただけで寒気がするし、その味を思い出すだけで胃酸が食堂まで上がってくる気さえする。
「あれはぶっちゃけ食べ物というよりBC兵器の類いだ」
「海に流したら深海棲艦にもダメージがありそうです」
「早霜、お前なんて恐ろしい事を……そもそも奴等よりも生態系へのダメージが深刻になるだろ?それ」
「ですが万が一の事態となれば有効な戦術では?」
「おいおい、磯風の料理ってそんなに酷いのかい?」
「「うん」」
「へぇ……そこまで言われるとむしろ興味が沸いてくるな。今度磯風に頼んでーー」
そこまで言いかけた天霧の肩に、ポンと手を置く。
「興味本位なんて軽い気持ちなら止めとけ、天霧。磯風のオリジナル料理を食って、ウチのニ航戦は危うく轟沈しかけたんだぞ?その意味、解るよな?」
「……マジ?」
その隣でコクコクと頷く早霜。ウチの鎮守府の食いしん坊担当、蒼龍・飛龍のニ航戦コンビ。量も沢山食べる上に、その消化器官も頑丈で、大抵の物は食べてもなんて事は無いんだが、そんな二人でも食べられなかったのが磯風の料理だ。なにせ一口食べたら泡吹いて白目剥いて引っくり返ったからな。あれは酷い事件だった……。
「そ、そっかぁ……あ、アタシお腹も一杯になったし部屋に戻るよ。おやすみ提督、早霜」
天霧は生まれたての小鹿の様に震えながら、覚束無い足取りで店を出ていった。残された俺達には気まずい空気が流れる……かと思いきや、
「ちわ〜っす。あれ、どしたの提督?空気が重いけど」
「あぁいや、何でもない。いらっしゃい」
「いらっしゃいませ」
新しい客がやって来れば頭と気持ちを切り替えて出迎える。それがプロの仕事ってもんだ。
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