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戦国異伝供書
第九十四話 負け戦を見据えその十二

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 そして元就の予想通り陶は言った。
「それではここからです」
「尼子家の本城ですな」
「あの月山富田城ですな」
「あの城に向かいますな」
「これより」
「確かな足掛かりを得ました」
 今まさにというのだ。
「ならです」
「この城からですな」
「さらに進み」
「そして月山富田城ですな」
「あの城を攻め落としますな」
「そうしましょうぞ」 
 こう言ってだった、瀬戸山城から。
 陶は軍勢をさらに進ませた、確かに瀬戸山城は拠点にすると言ったが。
 兵糧も武具もまともに入れず先に先に進む、元就はそれを見て言った。
「どうしてもと言うのならな」
「月山富田城を攻めるなら」
「せめてじゃ」
 こう志道に話した。
「折角攻め落とした瀬戸山城をじゃ」
「陶殿ご自身が言われた通りに」
「そうじゃ」 
 まさにというのだ。
「城に多くの兵糧や武具を集めてな」
「そのうえで、ですな」
「しかと足場を固めてな」
 そうしてというのだ。
「休みも取りな」
「そうしてですな」
「万全の状況にしてな」
「攻めるべきですな」
「陶殿は休まず攻められるが」
 瀬戸山城を拠点にすると言ってもそれはほぼ口だけでというのだ。
「それでは尚更な」
「敗れますな」
「将兵に疲れが出て」
「そして補給も」
 志道はこれの話もした。
「その路が長くなり」
「周防から月山富田城を攻めるには道のりが長い、だから瀬戸山城を攻め落としたなら」
 是非にというのだ。
「足掛かりにして城に兵糧や武具を多く運び込み」
「そしてそこからものを届ける様にして」
「じっくりと攻めるべきであるが」
 それでもというのだ。
「陶殿はされぬ」
「だからですな」
「それではさらに敗れる」
 そうなってしまうというのだ。
「余計に危うい」
「では」
「敗れると最初から言っておったが」
 それでもというのだ。
「その危うさがな」
「尚更強くなったのですな」
「そうなった」
 こう言いつつ進んでいった、これからどうなるかを確信しつつ。


第九十四話   完


               2020・4・15
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