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戦国異伝供書
第九十四話 負け戦を見据えその十一

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「戦うな」
「そうしますな」
「では、ですな」
「月山富田城を攻める時も」
「備えておきますな」
「そうする、それとじゃが」
 元就は話題を変えた、その話題はというと。
「くれぐれも酒はな」
「飲まぬことですな」
「特に月山富田城を攻める時は」
「そして己を保っておくべきですな」
「うむ、しかし陶殿は飲まれる」
 彼はというのだ、大内軍を実質的に動かしている彼は。
「大内家の直臣の方々もな」
「それではですな」
「そこを衝かれる」
「酒を飲んでいるところも」
「そうなりますな」
「そうなると思ってよい、だから我等はな」
 毛利家の軍勢はというのだ。
「決してな」
「飲まずにですな」
「戦を行う」
「そうしますな」
「そうした時も」
「酒を飲んで満足に戦えるか」
 そもそもというのだ、元就は真剣な顔で家臣達に問うた。
「一体」
「飲んでいるとやはり乱れます」
「それが深くなると潰れてしまいます」
「そうなってしまいますな」
「どうしても」
「だから飲むべきではない」
 戦の時に酒はというのだ。
「油断としては最たるものじゃ」
「だからですな」
「我等は飲まぬ様にする」
「そうして戦っていく」
「最後まで」
「その様にする」
 まさにというのだ。
「だから酒は持ち込まぬ、そして大内家の陣に行った時もな」
「飲まれませぬか」
「そして戦っていかれるのですな」
「そうしますな」
「そういうことじゃ、ではよいな」
 家臣達にあらためて話した。
「生きる為に戦うぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「何があろうとも」
「それではな」
 元就は家臣達に話しつつ大内家の軍勢の中で進んでいった、そして。
 瀬戸山城は大軍で囲み陶があっさりと攻め落とした、彼の采配は的確であり何の問題もなく城を攻め落とした。
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