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性暴力が星を滅ぼす
第2話 コズミックリポートNo.26
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か。決して<インフルエンサー>になどなりたくない。あの子は、恵里は元気にしているだろうか。

 ×××

「すまない。やはり、完全とはいかないようだ」と彼は申し開きをする。猿が謝罪する姿は滑稽で笑えるところだが、いまの気分ではそうもいかない。
「時々、この体の持ち主の本能みたいなものが、私の理性を超えて表出してしまう。暴れていたあれは、私の意志ではなかった。恐がらせたなら謝る」
「いや、大丈夫。イライラしてた気分が変に柔らいじゃったよ」
「話を続けよう。君たちが抱える問題は、我々にとっても切実な課題だ」
「そっちの星でもそういう犯罪があるんだ。そっか、それで、他の星の性暴力サバイバーから話を聞きたいんだね」
「わかってくれて感謝するよ」
 自分のことを<性暴力サバイバー>と形容するなど初めてだ。私の過去を知らない同僚や現在の数少ない友人とこんな会話をすることはない。にも関わらず、自分はいま臆することなく話をしている。この常軌を逸した状況がそうさせるのだろうか。
「でも、私よりも過酷な経験をした人やいまでも暴力や虐待に晒されてる人はいるよ。日本も酷いと思うけど、もっと犯罪率が高かったり、支援が不足してる国だってあるし」
「別の調査員が対応している」
「あっ」と私は声を上げた。
「これは同時多発に行われているリサーチだ。対象は被害者だけじゃない。被害者の家族や友人に話を聞きに行った者もいる。加害者との対話を試みている者も」
「私はその中の一人ってことか。ただ、なんだかな、あなたたちも配慮がないよね。被害を受けた女に男を寄越すなんて。普通は女性の調査員にすると思うけど」
 彼は沈黙してしまった。ピクリとも動かないが、何かは考えているようだ。いま世界中で、性暴力に関する、星を跨いだ聴き取り調査が進行中らしい。日本にも私以外に対象者はいるのか? 猿以外に憑依した例はあるんだろうか。その場合、どんな動物が人語を喋っているのだろう。他の皆は協力的に自身の体験談を語っているのかもしれない。私は……。

(続く)

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