第1話 映画は独りで見たい
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送を行う上で相性がいいらしいとのことだった。粒子のままでは会話ができないため、猿の肉体に、地球でいうところの〈憑依〉をしているのだという。ふざけた話だ。
私は猿の説明を、セミロングの毛先をいじりながら適当な相槌を打ちつつ、聴き続けた。途中、ダークブラウンの中に一本、白髪を発見し、一瞬、私の顔は醜く歪む。
「理解してないし、なんでもいいんだけど、最初の質問に答えてないよ」
私はタメ口になっていた。
「そうだった。失礼。まず、この動物はメスだ。だが、私の声はどちらかといえば、地球の男性に近い」
「吹替版」と私は言った。「あんたの喋り方、洋画の吹替とかアニメのキャラクターみたい。『ふむ』なんて言う人、実際にはいないよ」
「そこも説明させてもらおう」と妙にかしこまった、まったく自然体ではない口調で猿は言う。低いトーンでありながら、はっきり聴き取れる活舌のよさも声優みたいだ。
「ここへの訪問前、君たちの文化を受信して集めたアーカイブで学習したんだ。テキストを翻訳するより、音声から解読するほうがやりやすかった。私のケースでは、君の指摘したコンテンツからの学習が多かったせいだろう」
「うん、まあ、わかった」
私は気のない返事をした。
「我々の星にも肉体的に二種類の性差がある。精神的な面や解釈を考慮すれば、さらに多くのパターンを持つ」
「へえ、地球と同じなんだね」
また気のない返事。
「君の質問について、二種類あるといっても地球での男女とはやや異なる。が、どちらかに分類するならば、私はオスだろう」
「それで、男の声ってわけ?」一つ理解が増えたが、何もすっきりしない。頭はぼんやりしたままだ。
「それで、目的は?」
(続く)
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