今宵、星に願うなら……(七夕編)
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「恭一郎くんは、織姫と彦星をどう思う?」
「どうしたの未来さん?」
突然の問いかけに、恭一郎は首を傾げる。
「何となく、聞いてみたくなっちゃって……」
「そうだね……。一年に一度だけしか逢えないなんて酷いなぁって、子供心に不満だったのは確かだよ」
「不満だった、かぁ……。それだけ?」
「それだけって?」
首を傾げる恭一郎に、未来は夜空を見上げながら答える。
「わたしはね、いっその事自分から逢いに行っちゃえばいいのにって思うんだ」
「自分から逢いに?」
「うん。織姫も彦星も、お互いが大好きなら、一年に一度なんて与えられた制約なんかに縛られてないで、自分から逢いに行くべきだとわたしは思うの」
「天の川を越えて、かい?」
「橋なんか掛けてもらわなくていい。船を漕いでだって、逢いに行く事はできるでしょ?」
なるほど、と恭一郎は納得したように頷く。
「確かに、天の川が激流だなんて、伝承には伝わってないもんね」
「でしょう?」
「でも、だとしたら……二人は逢えないんじゃなくて、逢わないが正しいのかも」
「え?」
今度は未来が首を傾げる番だった。
「ほら、伝承通りなら、二人は結婚してから仕事に手が付かなくなって、周りに迷惑をかけた。それで天帝の怒りに触れたから、天の川を挟む場所に引き裂かれたわけだろう?多分二人は、再会したらまた同じ事になる事を知ってるんじゃないかな」
「そっか……。でも……それで二人は、本当に幸せなのかな?」
「もしも、織姫と彦星が誰にも責任を問われなくていい立場だったら、違ったのかもしれないね……」
恭一郎の答えを聞いて、未来は何か思い付いたように呟いた。
「……じゃあ、わたしの彦星様は、もしもわたしが皆を困らせてたらどうする?」
「そっ、それは……ッ!?」
恭一郎は一瞬吃ったが、二、三拍空けてから口を開く。
「──止めるよ、絶対に」
「ふぅん……どうして?」
「本当の幸福は、誰かの幸福を脅かすものであってはならない。だから、未来さんが誰かを困らせるなら、僕は絶対に止める。僕自身の幸せと、未来さんの幸せを守るために……」
その答えを聞いて、未来はしばらくポカンと口を空けていたが……やがて可笑しそうに笑い始めた。
「未来さん?」
「ああ、ごめんね。恭一郎くんの事を笑ったわけじゃないの。ただ……」
「ただ?」
「……恭一郎くん、わたしの彦星様になってくれるんだなって」
「…………ッ!?」
質問の内容に気を取られ、見落としていた事に気付いて顔を真っ赤にする恭一郎。
そんな恭一郎の顔を見て、悪戯っ子のように笑う未来。
まだ不意打ちには照れがある恭一郎。そんな彼の事が、未来は愛おしい。
克己心の強い彼の事だ。いつかは
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