黒魔導士と妖精軍師
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向く。
「ヴァッサボーネ、みんな、ごめん。私の魔力じゃあなたたちも連れていくとほとんど地上に滞在できないの。だから・・・」
「大丈夫だよ、ヨザイネ」
ヨザイネはナツたちを蘇らせる時に自らの生を差し出した。通常の彼女には死者を蘇らせる力などない。だから、彼女は自身の魔力の限り地上に滞在し、ティオスと天海を倒すための最善を尽くさねばならない。
本当はドラゴンたちも連れていければいいのだが、人数が多くなればなるほど1人辺りの滞在時間が限定されてしまう・・・彼女の苦渋の決断を、ドラゴンたちはよくわかっていた。
「我々はこの戦いよりも遥か昔に力を失っている」
「もう、私たちが出ていくべきではないわ」
「それに、アクノロギアですら歯が立たないものたちの相手など、できるはずもない」
「我々はこの戦いをこの場から見守ろう」
「あとは、君たちに任せる」
イグニールたちがそう言うと、言葉を発しなかったメタリカーナもヴァッサボーネも小さく頷いてみせた。
「オーガスト」
そのドラゴンたちの後ろから聞こえてきた青年の声に、オーガストは一瞬固まった。彼はゆっくりと振り返ると、そこにはたった今地上から姿を消した2人の姿があった。
「ごめんね、君のことに気付いてあげられなくて」
「お父さん・・・」
ゼレフから絶対に聞くことができないと思っていた言葉を聞き、涙腺が緩む。その彼の隣から駆けてきた少女は、オーガストの胴体にしがみついた。
「私たちのせいでこうなってしまったのに・・・何もしてあげられなくてごめんなさい」
「僕は父としても皇帝としても失格だね」
2人はすでに精神的に参っているのが手に取るようにわかった。オーガストはその言葉に首を振ると、抱きついているメイビスを引き離す。
「2人は自分たちの信じる道を進んできました。そしてここからは、私たちがその道を切り開いてみせます」
彼らに背を向けそう宣言するオーガスト。親としての役目を果たせなかったのに、グレることもなく立派に育っている彼の姿を見た2人は思わず笑顔になってしまった。
「ヨザイネ」
そして、今にも飛び出そうとしている少女に、最愛のドラゴンが声をかける。
「シリルたちをよろしくね」
「えぇ、もちろん」
水の竜のその言葉に背を向けたまま返事をしたヨザイネは、隣に立つオーガストと目線を合わせ、共に頷く。そして、彼らは地面に吸い込まれるようにその場から姿を消した。
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