ターン28 翠緑の谷の逆鱗
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ったんだ。
笑っちまう話だが、最初は何をすればいいのかわからなかった。皆もそうだった。ようやく我に返ったのは、2つ目のビルが倒壊したときだったね。
「……っ、まずい!お前ら、早くデュエルディスクを切れ!」
とにかくこれ以上の被害だけは避けようとして、大声で叫んだ。「BV」さえ切っちまえば、カードはカードだからな。アタシも含めほとんどの奴はその場で電源を落としたが、1人だけ決死隊みたいな顔でその場から急に逃げ出した奴がいた。アタシも咄嗟に追いかけようとしたんだが、ちょうど訳も分からず逃げようとする人波の先頭に巻き込まれて思うように前に進めなかった。もたついてるその隙にまた隣のビルでボン、さ。ますますパニックはひどくなる、砂埃が視界を塞いで、コンクリの破片がでたらめに飛んでくる。地獄絵図ってのはまあ、あれのことを言うんだろうな。今にして思うと、よくアタシはその流れ弾に当たらなかったもんだよ。
結局その逃げ出した奴に追い付いたときにはすっかり周りは廃墟になってたし、人影なんてアタシらの他には誰もいなかった。昔のアタシよりほんの少し若かったから、多分二十歳にもなってないガキだったんだろうなあ。
「いったい何のつもりだ、この野郎!」
「何のつもり?いい加減にしてくれよ、それはこっちのセリフだ!」
「あー?悪いな、アタシはアンタの顔も知らねえんだ」
……まあ、あの時は、アタシの言い方も悪かったんだろうな。若かったんだ。案の定この返事がよっぽど気に食わなかったらしくて、余計に表情を歪めて怒りだしたよ。
「ああ、そうだろうなあ。剣順平……俺の名前なんて、お前は知るわけがないよなあ。だけど俺は、お前を知ってるぜ。お前らプロデュエリストのせいで、カードショップをやってた俺の親父は廃業に追い込まれた!なあ、わかるか?『赤髪の夜叉』さんよお?」
「……っ、それで、ここにいる全く関係ない人を巻き込んだってのか。その親父さんが聞いたら泣くぜ」
そう言ってやった時にそいつが見せたぞっとする表情と来たら、今でもくっきり覚えてるぜ。壊れた笑い、っつーのかね?確かに口の端だけは笑ってるんだが、目ん玉が濁って何の感情も見えてこねえんだ。そのくせじっと見てると、今にも泣きそうなのに涙が出てこなくて苦しんでるみたいにも見えてきてな……ああクソ、久々に嫌なもの思い出しちまった。まあとにかく、そいつはこう答えたんだ。
「親父はもう泣けねえよ。泣かねえし、笑えねえ。店を潰した次の日、レジの前で首吊ってたのを最初に見つけたのは俺だ。悔しい、苦しい、すまない……それだけ書いた紙切れ1枚、遺書がわりに置いてあった」
「……」
「だから俺は、お前らを許さねえ。親父は普通のどこにでもいる人間で、いつも笑ってカードを売ってたんだ。絶対に、あ
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