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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン28 翠緑の谷の逆鱗
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記憶がより鮮明に蘇ったのだろう。ここで一度話を止め、豪胆な彼女には珍しい今にも泣き出しそうな痛々しい笑顔で肩をすくめる。さりげない動作で潤みつつあった目元をぬぐい、深く息を吸ってどうにか平静を保ちつつ話の続きにかかる。

 ……すまんすまん、続けるぞ。もうぐちゃぐちゃだ、あの時期は本当に何やっても駄目だった。国の偉いさんも、「BV」の利権やらでよっぽど忙しかったのかアタシらには何にもしてくれなかったしな。アタシ?アタシは一応貯金もあったしな、あと昔はファンも多かったし?細々と公式グッズも売れてたからそっちの収入でどうにかやってたよ。もしかしたら藁人形に張り付けられて真夜中の神社で五寸釘打ちつけられてたかもしれんが、別にどう使おうとアタシに金が入ってくることに変わりはないさ。
 で、そんな調子でしばらく経ってからだ。アタシの所に、同じようにじっと耐えてたプロ仲間や商売あがったりのデュエリスト産業の方々でデモ行進しようって話が回って来てな。暇してたのもあったし、二つ返事で引き受けたよ。それで何か変わるとは思えなかったが、とにかく何かしたかったんだ。
 ……今にして思えば、その時点でもう罠にかかってたんだろう。おかしいと思うべきだったんだ、100人単位で参加者がいる馬鹿でかい行進なのに主催者の名前が見えてこないなんてな。ともかく、アタシはその日に指定された場所に行った。ひどい曇り空でな、今にも雨が降ってきそうだった。久しぶりに会う知った顔相手に駄弁ったりしてのんびり待ってる間に、どうもおかしいことに誰かが気づいた。周りの視線が冷たいのはそのころには慣れっこだったが、どうもそれだけじゃない妙な緊張感があった。まるで、何かを待ちかまえてるような……なんか変だなーなんて言いながら、開始時刻の午前10時になった。その時間になったら一斉にデュエルディスクを起動して、危害を加えないことをアピールしながら歩き出そうって話だった。主催者は相変わらず名乗り出ないから仕方ねえ、なんとなくその場のノリでアタシが音頭を取ったよ。

「よおおし、お前ら!どうせやることはわかってんだ、もう始めようぜ!」

 んでデュエルディスクを起動した、その時さ。突然視界がかっと明るくなって、耳が聞こえなくなるような轟音がして。目の前のビルが崩れ落ちてくのが妙にスローモーションに見えて、その時ようやく悟ったね。ああ、アタシらはハメられたんだって。
 計画を立てたのが誰なのか、目的は何だったのか……そんなこと、知ったこっちゃない。ともかくそいつはアタシらの、プロデュエリストのデュエルディスクにしか組み込まれてない「BV」だけが欲しかったんだ。ほら、七曜のバカと蛇ノ目のアホがやろうとしたことと同じだよ。あらかじめ用意した爆発物のカードの所にアタシらがわざわざ出向いて「BV」の効力圏内にしちま
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