ターン28 翠緑の谷の逆鱗
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た。なにせ13年間、ただの一度も口にすることなく隠し通してきた話なのだ。
しばらく2人とも黙っていたが、ややあって先に口を開いたのは清明だった。
「……なるほどねえ」
「おっと、慰めはいらんぜ?自分の正当化は、もう13年間ずっとやってきたんだ。今更付け足してもらうこともないさ」
「いや、違うよ。僕とは逆だなあ、って」
妙に大人びた、弱々しい笑顔で微笑みかける。ぽつりぽつりと、続けて語りだす。
「うん。僕も、ずっとずっと後悔してる。だけど僕の場合は、ある人を助けられなかったんだ」
「……それで?」
「その人がどれだけの覚悟をもって僕の前に立ちはだかったのか、少し考えればわかることなのに。僕はそんなこと考えすらせずに彼女の厚意に甘えて、せめてその心を楽にする程度のことすらできなかった。そのあげく、殺しあってたはずの彼女に助けられる形で今でも生き恥さらして、さ」
「そうか」
過去を語る清明の顔には、ほんのわずかな郷愁の念と……それ以上の苦痛と後悔が、はっきり表れていた。本人の言葉通り、今でも後悔を続けているのだろう。
理由は違えど互いに消えない十字架を背負い、いまだにそこから逃げ続ける身。そんな同族意識だからだろうか、あるいは傷をなめ合おうとでもいうのか。いずれにせよ糸巻は、柄にもない言葉を口にしていた。
「……お互い、大変だな」
「……うん。うん、本当に」
万感の思いを込めて頷きあう。どうせまたすぐに、もはや彼女たちにとってはそれが日常となった決して消えない罪の意識からくる自己嫌悪と浅ましい正当化の無限ループに心で泣いて、それでも顔だけは笑っていつも通りの日々に戻っていくのだろう。それでもせめて、今この瞬間だけは。
午後の日差しが柔らかに病室へと差し込み、白いシーツに反射して部屋を明るく照らしていた。
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