ターン28 翠緑の谷の逆鱗
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の制限もない。たまたまぶちかました先に飲食店のガス缶か、それとも木炭か……なんにせよ、何か燃えやすいものがあったんだろう。かっと視界が真っ白になって、急速に温度が高くなるのが肌で感じられた。あと1秒もしないうちにここら一帯はアタシごと吹き飛んで、何もわからなくなるだろう……命の危機でスローになった視界の中で、最後にアタシが考えたのはそんなことだった。
何もできなかった。真紅眼を除いてな。いきなりところどころ骨がむき出しになったボロボロの翼を大きく広げてアタシの上に覆いかぶさって、その体を盾にしてくれたんだ。少なくとも、アタシにはそう見えた。直後の衝撃はそれでもすさまじいもんで、あっという間に気を失っちまったがな。
「う……」
それから、どれぐらい経ったのか。ようやくアタシが目を覚ました時、そこは廃墟の中じゃなかった。白いシーツに明るい天井、さっきまでが嘘みたいな世界。アタシも天国に行けるような人間だったのかとも思ったが、んなこたぁない。なんてことない、どっかの病院だったのさ。アタシが目を覚ましたら教えろって言われてたんだろうな、目を開いてじっとしてたらすぐに何人かのスーツ着たおっさんどもが集まってきた。
「……アタシに何か用か?」
「我々は日本政府の人間、とだけ言っておこう。糸巻太夫君、寝起きの所さっそくで悪いが、君にぜひとも了承してもらいたいことがある……」
そこで初めて聞いたのが、デュエルポリスの話だ。近々国の垣根を越えた世界的な機関を作るからお前も入れって、ある意味スカウトっちゃあスカウトだな。
最初はなんて答えたかって?そりゃもちろん、ふざけんな今更どの面下げてきたって怒鳴りつけてやったさ。病院のベッドで包帯ぐるぐるに巻かれた女に言われても今一つ迫力はなかったろうが、アタシは本気だった。これまでアタシらがどれだけ苦しんでも国は一切手を差し伸べようとはしなかったし、剣の親父さんみたいな奴だってその時にはもう両手の指じゃ数えきれないぐらいはいたはずだ。剣はその中で、一番行動力があったってだけの話さ。それを今更叩き潰すための機関を、それもプロデュエリストを徴兵して昔の仲間と同士討ちさせろだあ?今すぐアタシの前から失せろ、できないんならその骨へし折って外科まで送りつけてやる。安心しな、ここは病院だからそう長くはかからねえからよ。
だけどアタシがそうやって啖呵を切ることも、最初から予想してたんだろうな。頷きあったかと思うと、奴らはとんでもないものを見せてきやがった。
「……書類?」
「それとこちらの写真だ。その怪我では読むのも一苦労だろうから簡潔に説明すると、君があの戦いで発生させた被害の総計だな。町ひとつのインフラと箱ものの徹底的な壊滅。これだけでも数千億単位の損害だが、人的被害も死者398人、重体84人、重
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