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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第39話:力無き者の戦い
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れて、その中身が完全に冷めた事にも気付かず彼の話の続きを待っていた。
「で、まぁ、色々あってね。力を手に入れて大切な奴を守れるようになって、命懸けだったけどそいつを助ける事が出来たのさ。その時、そいつが何を思ったと思う?」
「え? ありがとうとか、感謝……ですか?」
予想通りの答えに、颯人は当時の事を思い出し笑みを浮かべた。これは当事者でないと絶対思いつかないだろうから仕方がない。
「答えはね……『心配』だよ。未来ちゃん」
「心配?」
「そ。そいつ曰く、『何馬鹿なことしてんだ』だってさ」
あの時は本当に無茶をし、そして奏に心配をかけてしまった。3年間音信不通だった事もあり、奏がどれだけ心配していたかは想像するに難くない。
その事に自分が奏にとってどれだけ大事な存在であるかが分かり、嬉しく思うと同時に彼女をいたく心配させてしまった事に申し訳ない気持ちも芽生えてくる。
「多分、俺とそいつの関係を2人に照らし合わせるなら、未来ちゃんが俺の立場になるんじゃないかな?」
「私が?」
「そ。響ちゃん、よく君の事言ってたよ。よっぽど君が大事なんだろうな。そんな君が待っててくれるから、響ちゃんは頑張れるんだ。生きて君の所に帰る為にね」
颯人と奏だってそうだ。互いに相手が居るから、生きて帰る為に最大限の力を発揮できる。帰る場所が、大事な相手が居れば人は限界以上の力を発揮できるのだ。
「言いたい事は分かります。でも……」
それでもやはり未来の心には、ただ帰りを待つしか出来なことに対する
蟠
(
わだかま
)
りがあった。何となくその気持ちが分からなくもない颯人は、困ったように小さく唸る。誰かを大事に思うあまり、じっとしていられない気持ちは分かるからだ。
「こう考えてくれないか? 響ちゃんを迎える事が未来ちゃんの戦いだって」
「迎える事が?」
「そうさ。響ちゃんと一緒に戦いたいって言う未来ちゃんの気持ちは分かるけど、もし本当に未来ちゃんが戦いの場に出て怪我したり最悪死んじまった場合、響ちゃんはとんでもない位悲しむ。未来ちゃんもそれは望んじゃいないだろう?」
そんなの、言われるまでも無い事だった。未来にとっても、響が悲しみ絶望するのは望むところではない。
ただ待つのは辛い。だがそれに比べて命と隣り合わせの危険な戦いに身を投じる事は楽な事なのかと言われたら、そんな事は無い。戦う事は戦う事で辛いだろう。そして響は、そんな戦いに身を投じている。
──あぁ、なんだ……同じ事なんだ──
敵を討つ事だけが戦いなのではない、戦場に向かった者をひたすら待つこともまた戦いなのだ。いや、戦いに向かった者が帰る場所を護る事こそが戦いと言っても良い。
未来に求められる戦いとはそう言うものなのだ。
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