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戦国異伝供書
第九十三話 安芸の掌握その十二

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「大内殿と陶殿だが」
「陶殿は大内殿のご寵愛を受けていますな」
「そうした間柄ですな」
「このことは我等も知っています」
「左様ですな」
「だからこそ絆は深い」
 二人のそれはというのだ。
「実にな、しかしな」
「それでもですか」
「その絆についてですか」
「殿は言われますか」
「うむ、その絆も絶対のものではない」
 こう言うのだった。
「この世に絶対のものはないからな」
「だからですか」
「その絆が何時までも深いか」
「そのことはですか」
「わからぬ、お二方の絆が確かなうちは大内家も健在であろうが」
 それでもというのだ。
「若しそれが崩れるとな」
「大内家は危ういと」
「そう言われますか」
「殿としては」
「そう思う、大内殿は戦は確かに不得手であるが政と文は出来る方じゃ」
 義隆はというのだ。
「そちらはな、そして陶殿は突っ込み方であるが戦は出来る」
「では政と文は大内殿で」
「戦は陶殿」
「大内家はお二方がおられてこそですか」
「動きますか」
「満足にな、その絆が崩れるとどうかと思う」 
 その様にというのだ。
「どうもな、しかし今はな」
「はい、負け戦をどう戦うか」
「そしてどう生きるか」
「それが問題ですな」
「そうじゃ、そのことを第一に考えていくぞ」
 こう言ってだった、元就は大内家のこれからのことを考えつつもまずは戦のことを考えていた。この戦でどの様に生きてどの様に利益を得るか。そのことを考えつつ戦のことを進めていくのだった。


第九十三話   完


                  2020・4・8
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