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戦国異伝供書
第九十三話 安芸の掌握その十

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「それがしは」
「左様ですか」
「はい」  
 まさにというのだ。
「それがしは」
「それでは」
「はい、万事抜かりなくです」
 そのうえでというのだ。
「ここまで進めてきましたし」
「あの城を攻める時も」
「何の憂いもなくです」
「攻めてですか」
「あの城を攻め落とし」
 そしてというのだ。
「勝鬨をあげましょうぞ」
「その後は」
「出雲を手に入れ」
 尼子家の拠点であるこの城をというのだ。
「そしてです」
「そのうえで、ですか」
「あの家に城下の盟を誓わせます」
「降してですか」
「尼子家を組み入れます」
 大内家の治の下にというのだ。
「そうします」
「そして大内家は、ですか」
「山陽と山陰の覇者となります、そして殿は」
 陶は義隆を見ても隣に笑みを浮かべて話した。
「西国探題に名実共になられ」
「そのうえで」
「幕府にもです」
「そのことを認めてもらって」
「そしてです」
「幕府もですか」
「これまで以上に重い役職に就かせてもらい官位も」
 朝廷から戴くそれもというのだ。
「上げてもらいます」
「わかり申した、では」
「毛利殿もですぞ」
 陶は元就が戦で槍働きをすることを申し出ようとしたことを遮って自分の言葉をさらに続けたのだった。
「安芸一国の守護にです」
「して頂けますか」
「はい、そして」
 そのうえでというのだ。
「官位もです」
「そちらもですか」
「頂けますぞ」
 そうなるというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、ご期待を」
「わかり申した」
 元就は自分の言葉を止めてだった、陶の言葉に頷いた。そしてだった。
 軍議の場で自分の考え出来るだけ勝つ様に考えて述べたそれもだった。
 陶は笑ってだ、元就に言った。
「いや、慎重過ぎるのでは」
「そうですか」
「はい、やはり」 
 この度はというのだ。
「このまま大軍であることを使い」
「攻めるのみですか」
「大軍に余計な小細工は無用ですな」
「はい、かえって」  
 元就もその通りだと答えた。
「確かに」
「左様ですな、ですから」
「それで、ですか」
「この度はです」
 元就の慎重策ではなくというのだ。
「前に進み尼子家の国人達もです」
「そうしていけばですか」
「こちらにつきます」
「それはそうかと」
 元就もこのことはその通りだと述べた。
「あの者達もです」
「我等が攻めればですな」
「こちらにつきます」
「そして数が余計に増えますな」
「そうなります」
 陶に述べた。
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