第42話「鋼の腕の伴奏者」
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放物線を描いてウェルの影へと刺さった。
ウェルの腕が宙で、まるで針で縫い留められたように動かなくなる。
〈影縫い〉
「が──ッ!? ぐぐ……ッ!」
「あなたの好きにはさせませんッ!」
緒川の得意とする忍術、影縫いだ。これでウェルの左腕は動かない。
誰もが、これで終わりだと確信した、その時だった。
「奇跡が一生懸命の報酬なら……僕にこそおおお……ッ!!」
「ッ!? お前……ッ!?」
顔に浮き出た血管が、強引に動かした左腕が裂け、勢いよく血が噴き出す。
だが、もはやそんな事を気にするウェルではない。
ただ、彼は生きてきた中で一番悔しかった。
一番気に食わなかった男の事を一瞬だけでも、英雄らしい、などと思ってしまった事が、この上ない程に悔しかった。
だから彼は……ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクスは、装者も、統治するには手に余る人類も、世界で一番気に食わない男も、左手に繋いだフロンティアにて全てを駆逐すべく、ついには血の涙を流して奇跡を起こしてみせた。
およそ奇跡と呼ぶには似つかわしくない、滅亡級の災厄という最悪の奇跡を……。
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