第42話「鋼の腕の伴奏者」
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言を胸にヒーローとなったN.Y.の親愛なる隣人がいた。
ヒーローはいつだって、何かを失った後悔を糧にして立ち上がり、もう二度と失わないためにと抗う存在だ。
だったら……これは始まりなんだ。俺は自分を責めるのではなく、前を向いて進まなくてはならない。
そうだ……この気持ちこそ、俺の原点。
現実という名の怪物に打ちのめされて、いつしか忘れていた大事なもの……誰にも奪えない、胸の誓いッ!
『思い出した?』
ああ……しっかりな。もう二度と忘れない。
『じゃあ……立って、義兄さん、立ち上がって。ツェルト義兄さん……わたしの……わたしと姉さんの、たった一人のヒーロー』
わかった……。セレナ、ありがとう。
俺はもう負けない。必ず勝って、世界を救って、君を目覚めさせる。
『うん。わたしも力を貸すから……だから、必ず、わたしを目覚めさせてくださいね?』
必ずだ。約束する。
光の方を見上げると、俺とセレナに音が降り注ぐ。
これは……歌だッ! マリィの、皆の歌が聞こえる……ッ!
『いってらっしゃい、ツェルト義兄さん』
ああ、行ってくる。必ず皆と、君を笑顔で迎えられるように──
ff
その頃、戦場では装者達が再生するネフィリム、並びに増殖したネフィリムの幼体を相手に苦戦を強いられていた。
「こいつ、効いてるのか効いてないのかわかんないデスッ!」
「ここまでとは……わたしたちの攻撃じゃ、とても──」
切歌と調が弱音を吐きかけた、その時──
「だけど、歌があるッ!」
振り返ると、そこには毅然とした表情で、先ほど響が足場にしてきた岩の上に立つマリアの姿が。
「マリア……ッ!」
「マリアッ!」
「マリアさんッ!」
全員が跳躍し、マリアの元に集まる。
「もう迷わない……だって、マムが命がけで月の落下を阻止してくれている」
マリアは月を見上げ、首から下げたペンダントを握る。
『できそこないどもが集まったところで、こちらの優位は揺らがないッ! 焼き尽くせッ、ネフィリイイイィィィィィムッ!!』
以前にも何処かで、似たような言葉を聞いた気がする。
ジェネレータールームで体を仰け反らせながら叫ぶウェルに従い、ネフィリムは特大の火球を放つ。
火球は9人に向かってまっすぐに飛んでいき、浮遊していた岩をまとめて吹き飛ばす大爆発を起こした。
『うぇへへへへへッ、へへははははははッ!』
装者達は塵さえ残らず焼き尽くされたと、大笑いするウェル。
だが、次の瞬間──その顔から笑みが消えた。
「──Seilien coffin airget-lamh tron─
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