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神機楼戦記オクトメディウム
第21話 思わぬ奥の手:後編
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とは思えないような歪な声だと認識する他にはなかったのである。
 そして、一頻り笑ったミヤコはそのままこうのたまい始めたのであった。
「いやね、余興としては楽しめたわ。これには感謝しないとね」
 その聞き逃せない言葉に、士郎は反射的に言う。
「余興……だって?」
 その質問に、ミヤコは律儀に返していくのであった。その姿は余裕の一言であった。
「そう、余興よ。私の今回の目的はあなた達とまともにやり合う事なんかじゃないのですから♪」
 そう弾むように言う様は、とても追い詰められている者の振る舞いとは思えないだろう。
「悪あがきはよすんだな?」
 士郎はそんなミヤコに対してそう言葉を選ぶのであった。今の彼にはそうミヤコはそう表現する他にはない印象であったのだから。
 だが、ミヤコのその態度は覆らなかった。寧ろ、ふてぶてしくこう言ってくるのであった。
「あなた達こそ、自分達が今窮地にあるという危機感を感じた方がいいのではないでしょうか?」
「何!?」
 そのように思わせぶりな言い回しをするミヤコに対して、士郎は訝る態度を隠せなかった。
 無論、そんな態度を取る敵には警戒を怠らない士郎。だが、そんな彼にもミヤコは余裕の態度で言葉を投げ掛け始めるのであった。
「大神士郎君……だったわよね。さすがね、剣神を操り今こうして我等大邪と戦ってこれたのは……」
「……」
 士郎は思わず無言になってしまう。ミヤコの放つ言葉が今までとは違って、聞く者なら誰しも優しく包み込んでしまうかのような口調となってきたからだ。
 ──率直に言うと、それは心地良かったのである。今敵として戦っている相手にそのような事を思わせてしまう程の魔力を、ミヤコの口は有していたのであった。
 その甘く蕩けるような語りの下、ミヤコは続けていった。
「でも、やはり年頃の男の子よね。──好きな子がいるのだから」
「……」
 その、心の奥底から入り込んでくるような感覚に、士郎は抗えずにいた。その事には踏み込んで欲しくないのに、ミヤコの発する声は聞き手の心の防壁などまるで無いかのように容易く入り込んでくる。
「その好きな子は──『蒼月の巫女』、稲田姫子さんでしょう?」
「……」
 そう続けてくるミヤコに対して、士郎は尚も無言となるしかなかったのであった。そんな彼に対して、畳み掛けるように彼女は溶かすように攻め入る。
「いい目の付け所よね。あの子、お人形さんみたいで可愛らしいもの。しかも、性格も明るくて誰からも好かれるタイプときたものですしね……」
 そう言ってミヤコは頷く姿勢を見せる。それはガキノユウモンのコックピット内でやったにも関わらずに、今の彼女の振る舞いはそれすらを感じさせてしまう程の何かがあるのであった。
 そして、敵が自分の言葉に飲み込まれているのを感じ取
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