第20話 思わぬ奥の手:前編
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黄泉比良坂の居城にて、そこに佇むのは一人の修道女であるのだった。
その表現に偽りなく、今この場にいるのは彼女一人であったのだ。
「……」
無言の彼女からは、心境を読み計る事は出来ないだろう。
やはりショックであろうか。自分が集めた同志が、この場にはもういないのだから。
もう彼女──シスター・ミヤコは孤立無援の状態にあるのだ。これがショックではない筈がなかろう。
そう思われていた矢先、突如として部屋中に響いたのは──笑い声であるのだった。
「あっはははははは!!」
そのような笑い方は、神に仕える修道女ならば一般的には想像出来ない産物であろう。創作物だとそういう破壊的な要素を持った修道女なキャラクターは決して少なくはないが。
問題は、この黒のロングヘアーに黒の修道服を身に纏った、外見を見れば清楚な女性から発せられたのがそのけたたましい笑い声であるという事であった。
「これは……飛んで火に入るなんとやら、ね」
『夏の虫』と言わず、敢えてワザとはぐらかす辺り、彼女の気分は高揚しているのであった。そうさせるだけの要素が彼女には備わったという事なのだ。
「おかげで、探す手間が省けたってものだわ♪ 後は『コンタクトを取る』だけ、という訳ね」
そう意気揚々と言うと、彼女は颯爽と独りだけしかいなかったその部屋を後にするのであった。
◇ ◇ ◇
ここは穂村宮高校であり、時は昼食時の屋上であるのであった。
そこには千影と姫子と泉美に加え、大神士郎の姿も加わっているのだった。
「士郎君も、これでめでたく『屋上デビュー』って所だね♪」
「いや、公園デビューじゃないんだから……」
何か言葉のニュアンスがおかしいと思いながらも、士郎は彼女達と一緒にこの屋上にて憩いの一時を過ごしているのであった。
気付いてみれば、女性三人に対して、男性一人という構図になってしまっていた。こういうのを一部では紅一点の対義語として『黒一点』というのだが、正式な呼び方ではないのが悔やまれる所である。
しかし、士郎は知っての通りその見た目は可憐な少女そっくりであるという、所謂『男の娘』タイプの容姿であるから、見た目的には全く問題はなかったのだ……である。
無論、士郎の気の持ちようという別の問題はあったのであるが、それも今では慣れて既にクリア済みであるようであった。適応力の早い事で。
そんなハーレム紛いの事にも慣れた士郎は、非常に平然としながらこう言ってくるのであった。
「それで、大邪衆との戦いはそろそろクライマックスとなるんだろう?」
その質問に答えたのは、いつの間にか推薦により先日四人のリーダーとなってしまった八雲泉美その人なのだった。
「ええ、私達が確認した通り、あそこにいた二人は高嶺さんとレーコ先生だったから、残る
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