第20話 思わぬ奥の手:前編
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
あった。
「ああ、初めてだったけど過度の緊張は余り無かったな。これも、和希兄さんがしっかりと剣術を教えてくれていた事……それと姫子さんが一緒に戦ってくれた事にあるかな?」
そう言って士郎はにこりと笑みを浮かべて見せる。やはり、見た目が見た目なので、その仕草は乙女のそれそのものといった風であるのであった。
泉美もそんな士郎の男子なのに愛くるしい振る舞いに思わず頬を緩ませてしまう。しかし、そんな彼を抱きしめてしまいそうになる衝動を押さえながら彼女は言う。
「私の場合は大邪の力を使っているから、あなた達とはイレギュラーな存在だから今こうして意見が聞けて良かったわ。あ、勿論あの子──カルラノカブトには感謝しているけど」
そう、少し他の仲間とは立っている土俵が違う事に少々憂いを覚えてしまう泉美。そんな彼女に士郎は言葉を返す。
「それは……泉美さん自身が分かっているんじゃないかな? この大邪との戦いを終わらせるには『形にこだわる』必要はないって事」
「あ……」
そう言われて泉美はハッとなるのであった。それは、彼女自身がいつもモットーにしている事である。それを自分で忘れてしまってはどういうものなのだろうかと。
「ありがとう士郎君。お陰で自分を見失わずに済みそうだわ」
そう泉美は心からのお礼を士郎へと向けるのであった。
「俺に言える事ってこれ位だからな。困った時には可能な限り相談に乗るよ」
そう、いくら泉美が頭が切れるからと言って、自分達がそれに依存してばかりではいられないのだ。彼女とて、一介の女子高生なのだから。
その士郎のなけなしの心配りに、泉美は再度感謝の念を覚えるのだ。
「改めて、ありがとうね」
そう再度のお礼を言った時の事であった。突如として周りの空気の流れが歪に変化をきたしたのであった。
「士郎君!」
「ああ、分かっている!」
二人が意識を昂ぶらせて言い合うと、その変化の原因がこの場に突如として姿を現したのである。
その姿は綺麗な黒の長髪に、黒の修道服といったもの。今の二人がそれを見まごう事はなかったのであった。
「「シスター・ミヤコ!」」
二人は同時に弾かれるようにその者の名前を言った。
だが、当のミヤコは至って平静を保ったかのようにしれっと言う。
「おやおやどうしましたか? 確かに修道女が道を歩いているのは珍しいかも知れませんが、それは偏見というものですよ」
そう飄々としてしらを切る素振りを見せるミヤコだが、当然二人はその手には乗らなかったのであった。
「ついに、敵の頭自ら出陣という事だな?」
「そういう事でしょう?」
そう口々に言う士郎と泉美。そんな二人に対して、ミヤコはさも面白げがないと溜め息を吐くのであった。
「……少しは『ノリ』と言ったものがあってもいいのではないでし
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ