第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第35話 冥界組との後夜祭
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、いつになく真剣な表情を浮かべながら言うので何事かと思う。
「それはね、あなたのお師匠様の事よ」
「依姫さんの事ですか?」
勇美は幽々子がおどけた表現をするものの、すぐに誰の事を言っているのかを察する。
「そうよ、物分かりが良いわね」
言って幽々子は微笑む。
「それで、依姫さんがどうしたのですか?」
「そうね、本題に入ろうかしら」
幽々子はそう言いながら勇美をじっくりと見据えた。
「あっ……」
それを受けて勇美は言葉にしがたい感覚に陥る。言うなれば、脳の内側から優しく揉まれるかのような心地良さ。
そんな得難い快感に苛まれている勇美を暖かく見守りながら、幽々子は話を続ける。
「まず、あなたはあの人──依姫が武士道を参考にした理論の元に励んでいるのは知っての通りね?」
「はい」
勇美は、はっきりと返事をした。
その事は勇美も知っているのだ。永琳の編み出した、武士道に近い教えを依姫は大切にしている事を。
勿論、依姫は武士道を鵜呑みにしている訳ではない。武士道の内、切腹や仇討ちといった問題のある要素は美徳とは考えてはいない。だが。
「そして、あの人の強さの一因になっているのは『死と向き合う事』だという事も……あなたを見ていれば知っている事は分かるわ」
「凄いですね、幽々子さんはそこまで分かるんですね」
勇美にそう言われて、幽々子は「具体的な根拠はないけどね」と付け加えた。
幽々子は特にその事は『これだから』と分かっていた訳ではないのだ。それは永い年月存在しているが故の洞察力からなるのだった。
そして、幽々子はここでこの話題に入った理由である『決定打』を打ち出すのだ。
「勇美ちゃん、あなた、その事を『格好良い』って思っているでしょう?」
「それは……はい!」
勇美は一瞬返答に迷ったものの、すぐに思い返して答えを決めたのだった。
確かにそうだ。勇美は死と向き合って生きる依姫を潔い人だと尊敬の眼差しで見ているのだ。ましてやそれが物理的にも精神的にも彼女の強さに繋がっているとなれば尚の事である。
そんな勇美に対して、幽々子は優しく、それでいて諭すように続ける。
「それを全面的に否定はしないわ。でも」
「……」
いつになく神妙な面持ちになる幽々子に、勇美は思わず唾を飲み込みながら続きの言葉を待った。
「あなたがそれに憧れる気持ちも分かる。けど、人間は『死んだらそこで終わり』。その事だけは忘れないでね」
「あっ……」
この瞬間勇美は幽々子が言わんとしている事は何かと理解した。
妖精のように死の概念が人間と異なる存在は、その身が滅びても自然が無事なら永い時間を掛けなくてもたちどころに再生するのだ。
だが、人間を始めとした生物はそうはいかない。命を落とせば、その存在は亡きものとな
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