第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第34話 月の侍と冥界の侍
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得意気に言いながら依姫へと剣を振り下ろした。
「見事な作戦ね」
依姫はそう感想を漏らす。決して嫌味ではなく、本心からの賞賛であった。ここまで無駄のない思案を行動に移すのは見事であるからだ。
しかし、ここで依姫は言う。
「だけど、作戦だけではいけない。よく覚えておきなさい」
その言葉に続けて依姫は意識を集中させる。
そして、身を後ろに引くと、妖夢の本体と分身を一纏めに狙い──剣を一気に横薙に振り払ったのだった。
あろう事か、依姫は本体と分身の持つ刃が行き届かない場所が現れる一瞬を狙って、一薙に攻撃したのだ。
「っくぅ……!」
妖夢本人と分身は依姫の剣戟を受け、後方に弾き飛ばされてしまった。
そして、霊力で作った仮初めの肉体である分身はその形態を保てずに元の半霊へと戻った。
完璧な筈の算段を阻止され、妖夢は今一度距離を取って依姫を見据えた。
「お見事です。私の作戦をこうもあっさり防ぐなんて……」
「世の中、机上の空論だけではいけないという事よ」
「はい」
依姫に諭され、妖夢は素直に返事をする。今依姫は敵として自分の前に立ちはだかっている訳だが、それでも敬意を忘れてはいけないと思っての事であった。
「では、次は私から行かせてもらうわよ」
言って依姫は妖夢と距離を詰めると、彼女に向けて刀を打ち出した。
咄嗟に楼観剣でそれを受け止める妖夢。
「くぅっ……」
苦悶の声を漏らすも、防戦なら自分に分があると妖夢は思った。
確かに攻撃には左右の腕を一度に片方しか繰り出せない。しかし、防御の場合には両の手に持つ刀を同時に使えるのだ。
これなら相手はそう簡単に攻め崩す事は出来ないだろう。
だが、それも一時のその場凌ぎにしかならないと妖夢は直感していた。
だから妖夢は一瞬の好機に賭ける事にしたのだ。
そう、これは賭けである。妖夢は博打事は良しとはしない性分ではある。
だが、相手は堅実に戦ってだけいては到底勝てない存在なのだ。
そして妖夢は依姫の剣戟に耐えながらも意識を集中した。先程二人の妖夢を破った依姫と同じような集中力を見せる。
幸い相手は一刀流なのだ。いくら攻撃する際に振るう刀はどちらにしろ一本にはなれど、相手が持つ刀が一本であるこの事実は揺るがない。
そして好機は訪れる。依姫が振るう剣戟に一瞬だがぶれが生じたのだ。それを妖夢は見逃さなかった。
「【獄界剣「二百由旬の一閃」】!!」
気付けば妖夢はスペル宣言と共に鋭い剣の横薙ぎを放ち、依姫の剣の持ち手を的確に払っていたのだった。
「……っ!」
一瞬の事に依姫は苦悶の声を出すと同時に──手に持った刀を離してしまっていた。
持ち主の手を離れ、刀はプロペラのように回転しながら、山なりの軌道を描き、遠くの地面に刺さったので
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