第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第34話 月の侍と冥界の侍
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「まだ甘いわね」
言うと依姫も鞘から刀を抜き放ち、妖夢のそれへと合わせたのだ。
刹那、キィンという金属音が鳴り響き火花が散る。
「くぅっ……」
妖夢が苦悶の表情と唸り声を示す。こうもあっさりと攻撃を受け止められては無理もないだろう。
だが、それは一瞬の事で、妖夢の表情は凛々しく冴え渡った。
そして、左手でもう一つの鞘に手を掛けると、妖夢第二の刀──白楼剣を引き抜き依姫へと向かわせる。
「甘いのは依姫さんの方ではありませんか? 私が二刀流である事を忘れてはいませんか」
妖夢は得意気に言いながら依姫に左手の攻撃を加えようとする。
「……いいえ」
ポツリと依姫は言いながら、白楼剣の剣戟へと自身の刀を合わせた。
再び鳴り響く金属音。
「忘れてはいませんよ」
「くっ……」
余裕を崩さなかった依姫に妖夢は言葉を濁す。
「いくら二刀流でも、同時に剣を振るう事は出来ないでしょう」
「……確かに」
正論を突き付ける依姫に妖夢は返す言葉がなくなる。
そんな妖夢に依姫は続けて言う。
「二本剣を持っていても、一度に相手をするのは一本の剣だと思えばいいだけの事よ」
「……」
妖夢は言葉を返さずに黙々と左右からの攻撃を繰り出し続けていった。
右、左、そしてまた右と。
だが、それらの攻撃はことごとく依姫に受け止められてしまっていた。これで依姫の言った事はハッタリでないのが証明されていた。
「はあ……はあ……」
妖夢は息を荒げていた。このまま続けてもいたずらに体力を消耗するだけであろう。
そこで依姫は妖夢に呼び掛ける。
「妖夢、スペルカードを使いなさい。この勝負のルールは何の為にあると思っているのかしら?」
「!」
それを聞いて妖夢は心の中で何かが弾けるような感覚に陥った。
──全くを以てこの人の言う通りだと妖夢は感じたのだった。
この人と勝負をまともに行うには、成りふり構ってはいられないだろうと。
プライドというものは社会を営む者達にとってなくてはならないのだ。でなければ好き勝手をしても恥じる事のない世の中となってしまうだろう。
だが、時にそのプライドをかなぐり捨ててでも何かを得ようとする姿勢は必要なのだ。プライドに囚われてばかりいては手に入る物もむざむざ捨てる事に成りうる。
それが今だと妖夢は直感した。──この勝負、何としてでも勝つと。
そう思い立ち、妖夢は一旦依姫と距離を取った。
そして、万を持してスペルカード宣言をする。
「【断命剣「冥想斬」】」
言うと妖夢は目を閉じて瞑想すると、彼女に霊気が集まっていった。
続いてその霊気は楼観剣に集まっていった。その霊気を纏ったまま、妖夢は剣を振り翳したのだ。
すると、剣の刃から霊気がカッターのように放出され
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