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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第32話 桜対戦:前編
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起こったのだ。依姫は神の宿った身体のバネの力で一気に幽々子目掛けて踏み込み、距離を詰めた。
 その勢いに乗ったまま、彼女は居合いの要領で刀を抜き放つと幽々子にそれを振り抜く。
 それは一瞬の事であったので、さすがの幽々子も掴み所のない動きで対抗する事が出来なかったのだ。
 だが、辛うじて手に持った槍で依姫の攻撃を受け止める事は出来たのだ。ガキィンとけたたましい金属音が辺りに響く。
 それに続いて、幽々子の持ち手には激しい振動が走ったのだった。幾ら肉体を持たない幽々子と言えど、その衝撃の体感は半端なものではなかったようだ。
「くぅ……っ」
 普段からの振る舞いらしくない、苦悶の声を漏らす幽々子。
 だが、幽々子とて易々と相手の攻めを許そうとは思わなかったのだ。彼女はその衝撃の勢いをそのまま利用する形で、後方へと距離を取った。
「ふう、驚きましたわぁ〜。でも、そう簡単には好きにはさせませんよ〜」
 生物だったら汗を掻いているような状況の中でも、幽々子は務めて余裕に振舞って見せた。
 だが、この場は依姫の方に分があるようであった。
「甘いですよ」
 言うと、依姫の普段から赤い瞳が更に禍々しく真紅に輝き、幽々子をその眼光で見据えた。
「!」
 それにはさすがの幽々子も戦慄を覚えたのだ。彼女に霊体であっても分かる程のピリピリとした空気が幽々子の肌を襲った。
 だが、彼女は尚も余裕さを振舞って見せる。
「威圧だけでは意味がありませんよ〜」
「ええ、もちろんそのつもりですよ」
 対して依姫は目を仰々しく見開くと、再び身体を踏み込み、幽々子に肉薄した。
 そして再度振り下ろされる依姫の刀。だが幽々子も負けじと槍を構えて攻撃を相殺する。
 またも激しい金属音と共に、刀と槍の間に火花が舞い散った。
 その鍛冶でも行っているかのような光景に幽々子はどぎまぎしつつも、再びその勢いを利用して後方へ下がり距離を取ろうとする。
 その事を察した依姫から、彼女らしからぬ無慈悲な言葉が吐き出される。
「無駄ですよ……」
 羅刹の如き獰猛な笑みを浮かべ、依姫はその場で刀を槍から離すと、再び攻撃を加えた。
 それも幽々子は槍で受け止める。いや、『受け止めるのがやっと』という状況に陥ってしまった。
 その間にも、依姫は剣戟を三度、四度と次々に繰り出していったのだ。
 それに対して幽々子は成す術がなくなってしまったのだ。
 まさに、依姫が今降ろしている二柱の神の効能にあった。言うなれば、『力の祇園様』と『技の天宇受売命』となるだろう。
 鬼神の如き猛攻で依姫は幽々子を追い詰めていった。そして……とうとう幽々子の手から槍が弾かれ、宙を舞って地面へと突き刺さってしまったのだった。
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