第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第32話 桜対戦:前編
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れこそが先程から姿を見せていなかった幽々子であった。まるでパズルのピースを一つ一つ埋め込むかのように幽々子の姿が再構築されていった。
このスペルは幽々子の再生手段だったようだ。彼女は完全復活を遂げたのだった。
「見事な復活劇ね」
「お気に召していただいたようで何よりですわ〜」
「ええ、さすがに自分の霊気をぶつけられて消滅なんてされては拍子抜けですからね」
軽口を叩き合う二人。だが依姫は流れが現在幽々子に傾いている事を実感していた。
攻撃を仕掛けてものらりくらりとかわされてしまう。さすがは亡霊だと。
だが、依姫は慌ててはいなかった。──それでこそ、かつて自分達を出し抜いた者だと。
そして思う。今流れが相手にあるのなら、自分に引き寄せてしまえばいいと。依姫は次なる神降ろしを行った。
「天照大神よ、この黄泉の迷い人の退路を断ちたまえ!」
続いてスペル宣言をする。
「【照冥「あの世すら照らす導きの光」】!」
その瞬間、辺りは優しい包み込むような朝日のような光に覆われたのだ、──今が夜であるにも関わらず。
「……」
そして、幽々子は気付く。自分の身がいささか重く地に縫い付けられかのような感触に。
「気付いたようね。勝手ながら、貴方のフィールドでの戦いは取り止めさせてもらいましたよ」
「これは参りましたわ……」
幽々子はいつもの飄々とした態度を、この時ばかりは崩していた。
自分が亡霊らしく掴み所なく振る舞えないのだ、無理はないだろう。
だが、幽々子は取り乱してはいなかった。意を決すると、普段からは考えられないような意志の強さの宿った瞳で依姫を見据えたのだった。
「【蝶符「鳳蝶紋の死槍」】……」
その宣言により、幽々子の右手に『ゴーストバタフライ』で見せた時と同じ蝶が次々に集まっていった。
そして一頻り集まると光に包まれ、溶けたチョコレートのように形を変えていったのだ。
その蝶の変態が終わると、幽々子の手には立派な槍が握られていたのだった。
レミリアのそれは、正に悪魔のように禍々しい物であったが、幽々子のは桜のように優雅であったのだ。
それを着物を着ながら携えている為、薙刀を持ち勇敢に戦う昔の女性を彷彿とさせるものがあった。
「感心するわ、貴方も槍が使えるのね」
「ええ、でも知っての通り得意分野ではないから、余り期待しないでね」
幽々子らしくなく謙遜しながら言うと、彼女はいよいよ意を決して槍を構えて依姫に一思いに振り下ろしたのだった。
それを依姫は難なく刀で受け止める。ガキンという小気味良い音と共に火花が舞う。
攻撃を防がれた幽々子は、ふわりと宙を舞って依姫と距離を置いた。
どうやら幽々子は亡霊としての特性は封じられても、その柔軟さは失われはしないようだ。
「幽々子様、
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